初恋リモーネ (ページ10)

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午後、今日の授業の終わりは体育。
お昼を食べて時間が経っていないのに動かされるし、今は今月に行われる体育祭の練習で、クラスメイトと関わりのない私には苦痛な時間でしかなかった。

「最悪」

リレーの練習中、隣の人とぶつかり転んでしまった。
蛇口を捻り傷口を洗ってから保健室に向かう。

挨拶をして入ったものの先生は不在。
棚から勝手に絆創膏を拝借して、当分来ないだろうしいいだろうとベッドに寝転がった。

「嘘、寝ちゃってた」

目を開けると時計はあと少しで授業の終わりを告げるチャイムが鳴ろうとしている。
今更、授業に戻っても意味がないし教室に戻ろうと体を起こすとベッドサイドの引き出しにメモが貼ってあるのが見えた。

"かえりいっしょにかえろうショウ"

「全部平仮名って。メッセージで送ればいいのに」

それは決して綺麗な字で書かれたとは言い難いけど、不思議とそのメモに心が温かくなった。

SHR後、平野くんに連絡を入れた。

A教室で待ってるね

既読がついたのを確認してアプリを閉じる。

隣のクラスから複数の椅子を引く音が聞こえて終わるのだと察する。
私も帰る準備をしようと鞄に手を掛けるとあるものがついていない事に気づいた。

「あれ、何で、」

それは平野くんがお祭りの日にくれた犬のぬいぐるみキーホルダー。
折角つけたのになくすなんて。
自席の周辺を探すけどそれらしいのは落ちていない。

「小林さん。何か探してるの？」

「あっ、えっと、キーホルダー探してて」

クラスメイトの池田さんに話しかけられた。
今まで話をした事なくて、つい辿々しくなってしまう。

「犬のやつだよね？西階段でさっき見かけたような気がするけど」

「ありがとう。見てみるね」

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