初恋リモーネ (ページ12)

今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:5,430 hit

12 ページ12

.

「Aさっきも転んだばっかりじゃん。今日、厄日なんじゃない？」

「私もそれ思った」

朝は自分の足で歩いていたのに帰りは背負われるとは恥ずかしすぎる。

「あっ、平野くん。私が転んだ瞬間見てた？」

「あったりー。授業暇で外眺めてたらA見えて、その直後に転んだの見ちゃった」

「それであのメモ、」

「トイレ行くーって言って保健室行ったらA寝てるんだもん。メモだけ置いといた」

「授業ちゃんと聞かないと単位落ちても知らないよ？」

「要領いいから大丈夫」

「ふーん。そうなんだ」

何とも平野くんらしい。
クラスメイトの子が"平野くんって何でも出来る"と騒いでいたから強ち間違ってはいないのだろう。

「探し物って何だったの？」

「えっ？」

「階段から落ちるほど必死になって探したんでしょ？そんなに大事な物なの？」

「えっと、キーホルダーだよ」

「キーホルダー？」

「お祭りの日に平野くんがくれた犬のキーホルダー」

「あれそんなに気に入ってたの？」

「…何か守ってくれるみたいな気がして」

「ふーん」

平野くんはそれ以上何も言ってこなかった。

「本当にありがとう。平野くんがいなかったら家まで帰れなかったよ」

「これくらいいいよ」

「家上がってく？飲み物くらい出すよ？」

「今日婆ちゃんの買い物行く約束したから早く帰らないといけなくて」

「そうなんだ。じゃあまた明日」

「あのさ、」

「どうしたの？」

「俺がAの事守ってあげるよ」

「へっ？」

「だーかーらー、キーホルダーじゃなくて俺がAの事守るから安心して？」

「ふふっ、ありがとう」

平野くんの可愛いのに何処か頼もしい一面が見えた瞬間だった。

.