想い人 ページ8
第三者side
その方は、いつも夕暮れ時に現れる。
此処はとある小さなお寺。罰当たりなことに、私はこのお寺の本堂に住み着いている。もちろん1人ではない。産まれたばかりの娘も一緒。夫は、蒸発した。
そんな私は、恋をしている。
二つに分かれた階段を、からんからんと下駄を鳴らして歩く人。彼は、とても美しい。
下駄の音を聞いて、子供は目覚めた。遊び疲れて寝ていたのにね。
『あ、チビちゃん起きてはったね。』
「きつねさんの下駄の音で起きたのよ。ほんと、色男は違うのね。」
『あはは。そないに褒めても、今日の晩御飯は豚の角煮だけやで?』
「私の大好物です。」
『さいですか。なら、ぎょうさん食べてもらわな。』
「勿論ですよ。
…いつも、ありがとうございます。この子達がもう少し大きくなったら、きちんと働いて今までの食費も全てお返ししますから。」
だからもう少し待って下さい。
そう頭を下げた私に、きつねさんは首を振った。
『女手ひとつで子育てしてはる人から、お金取ろうなんて思ってへんよ。ほら、僕紳士やから。』
文句は、受け付けへんよ。そう言って笑ってくれるのを分かっていたの。私ったら、いつの間にかこんな悪知恵がついちゃったみたい。それもこれも、きつねさんが甘やかすから。
「貴方は、馬鹿よ。そうやって私達みたいな人を甘やかしたら、逃げられなくなるんですから。」
『僕ね、逃げるの上手やから問題あらへんよ。
それに、勘違いしてもろたら困るわあ。今日作った角煮も今までの御飯も、全部失敗作。捨てんのも勿体無いから、君等に配ってるだけ。それだけやで?』
「…それが、甘いんですよ。」
勿論、それで助かっている私が言えたことじゃないけれど。
『君がそない言いはるんなら、そうなんやろな。
まあ、今日でそれも終わりやけどね。』
「え?」
『僕、明日から江戸に引越ししよう思ってんねん。てかもう引越してん。流石に宅配で飯送るなんて無理やからね。…ごめんなあ。』
「…本当に貴方は、罪な男ですね。」
『ふふ、僕もそう思う。』
この人に人生で二度目の恋をしたのが、運の尽き。
「…最後に、Aを教えてください。」
『なんかそういうん、ええね!映画みたいや。
僕の名前は南大路A。百戦錬磨の色男です。』
「もう、ふざけてるでしょ。」
▽▲▽
「南大路…、A。」
お母さんの、想い人。
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あきな(プロフ) - 面白いです!更新大変だと思いますが頑張って下さい!!応援してます!!! (2017年9月29日 21時) (レス) id: a03d3f2ed8 (このIDを非表示/違反報告)
空白 - 俺こうゆうの超好き!!!!!! (2016年6月18日 0時) (レス) id: 46538a2eea (このIDを非表示/違反報告)
夏凛 - めっちゃ面白いです! (2016年4月12日 1時) (レス) id: b1b68a76c0 (このIDを非表示/違反報告)
レイ - え?終わり?そんなわけないですよね!更新頑張ってください! (2016年3月31日 15時) (レス) id: 131cdd29b3 (このIDを非表示/違反報告)
潮音(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください!応援してます! (2015年11月8日 19時) (レス) id: 05ac5cb1f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とまと侍 | 作成日時:2015年10月21日 1時