Spicy Spicy(中・短編) (ページ5)

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(佐久間)

｢阿部ちゃん、お仕事は？｣

｢え？あー、休み｣

一大プロジェクトの後だから

なんて、笑っていた。

｢そう...｣

『一大プロジェクト』

阿部ちゃんが人生をかけて挑んだプロジェクト

昼夜問わず、ずっとパソコンと睨めっこ

休みなんてなくって

何回デートをドタキャンされたことか...

それでも、俺は阿部ちゃんが好きだったから

別れなかった。

ある日の夜

玄関のドアが開く音がした

｢おかえ...り｣

舘さんから教えて貰って

初めて肉じゃがを作った日

スーツ姿の彼は

この世の終わりのような顔をして、帰ってきた。

｢え、阿部ちゃん、どうしたの？｣

｢...なんでもない｣

｢なんでもなくないでしょ？？｣

彼の腕に触れた瞬間

｢うるさいなぁ！ほっといてくれよ！！｣

なにそれ、俺はただ心配してるだけなのに

｢はぁ！？気遣って言ってるのに何それ！！｣

｢余計なお世話なんだよ！！！

気遣わなくていいから、出ていって、、

1人にして...｣

さっきまで怒ってたのに、いきなり泣き始めた。

俺は面倒くさくなって

｢俺、出ていくから

じゃあね、阿部ちゃん｣

俺らの部屋を出ていった

俺は1週間、阿部ちゃんの所へ帰らずに

｢ごめんね、目黒。｣

｢大丈夫ですよ、俺は。｣

目黒と康二の家に居候していた。

｢佐久間くん、仲直りしなくて大丈夫なんですか？｣

冬になり始めていた季節

鍋をつつき合いながら

康二がそんなことを聞く

｢...疲れてたんだよ、きっと

だから、1週間くらい居ようかなーって｣

｢えー！

めぐきゅんとイチャイチャ出来へん...｣

｢佐久間さん、ずっと居てください｣

シュンとする、子犬と

真顔で俺に訴える、大きな子犬

2人とも可愛くて

愛らしくて

俺と阿部ちゃんにもそんな時期があった

なんて、思い出した。