【45】試合に負けて勝負に勝った一宮さん ページ47
『まさか一発でノックアウトされちゃうだなんてねー。
ある意味予想外な展開でびっくりしたよ。さすが射水君』
「アスヒちゃんの能力は中等部の頃から一撃必殺だったみたいだからね〜。仕方ないよっ」
私達はそう言いながら練習ルーム内に戻ってきて、ひみちゃんは一宮さんに膝枕をしてあげて、よしよしと撫でている。
射水君は私達に評価されていることに恐縮しきっていたり、一宮さんに謝り続けていたりでもうなんだかえらいことになってしまっていた。
「初心者の練習相手としてはちょっとレベルが高過ぎる三人なんだりゅい……。
でも、こうやって敗北から学ぶこともたくさん……」
「ないよ!!!?一瞬で負け過ぎて絶望感という言葉の意味しか学んでないよ!!?」
よほど余裕がないのか、先生の必死のフォローに噛み付いて、悔しそうに自分の唇を噛む一宮さん。
しかしそんな様子を見て私達が彼女のことを心配していると、一宮さんはひみちゃんの膝に顔をむぎゅーっと埋めて、
「はっ!!ここは天国!!!?
負けたらこんな素敵なところに来れるなんて!!
これは試合に負けて勝負に勝ったみたいなことでは!!?
勝ち組に分類される少女では!!?ううん、美少女と言ってしまっても過言ではないのでは!!?
そして次も負けたら今度は悠香ちゃんが禁断の生足を出して私に膝枕をしてくれるのでは!!?
普段は見えない細くて真っ白な悠香ちゃんの素足が私を待っているかもしれないのでは!!!?」
『いや、絶対にしないし待ってないからね!!!?』
恍惚とした表情を浮かべて喚く一宮さんと、それを全力で否定する私。
途端に、周囲に和やかな空気が流れる。
ひみちゃんは「いやぁん!!」と逃げ腰ながらもホッとした表情で。
でも私の足はそんなに細くないし白くもないと思うんだけど、と言おうとしたが、一宮さんの妄想につっこむのはキリがないことを思い出す。
「エルナのその性格ならどうなったって人生に価値を見出だすことができそうだりゅい……」
射水君もまだ少し気遣うような顔をしてるけれど、弛緩した空気に安心している様子だった。
そして暫く一宮さんが膝枕を堪能していたら、ひみちゃんが「重いー!!そろそろどいてー!!!」と強制的に一宮さんを膝の上から退かした。
「あぁー!!私の膝枕がー!!?返して、返してよー!!」
「ひみちゃんの膝の所有権はいつからエルナに変わったんだりゅい……」
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