【39】色褪せないキャンバスの世界 ページ41
牛乳苦手だけど飲んだ方がいいよね?と思いつつ、先輩をチラ見すると、
「遠慮しなくていいぞ。
それは俺の奢りだからな。有り難く飲めよ」
と、どこか誇らしげに言われた。
あっ、これ飲まないと怒られるパターンだ……。
こんな怖そうな先輩に怒られるのだけは絶対にイヤだ。
怒ったら何をされるかわかったもんじゃない。
『のっ、飲みます!!有り難く飲ませていただきますっ!!!
……………おえぇぇぇ……』
「一口目で吐くほど嫌いなのかよ!!!?
……ったく、苦手なら先に言え」
ぶっきらぼうにそう言いながら私に投げ渡してくれた次の飲み物はいちごミルク。
これなら私でも飲めそうだ。
『あ、ありがとうございます』
「別に礼はいらねーよ。
それよりお前は俺に何の用でここに来たんだ?
ポスター……がどうとか言ってたな?」
『あっ、はい!!その、美術部の方に今度の公演の宣伝に使うポスターを描いてほしいなと思いまして……』
「わかった。じゃあなんかこれといったリクエストはあるか?」
意外とすんなりOKしてくれた。
しかもリクエストまで聞こうとしてくれるとは……。
てっきり俺色に染めてやるぜとかそういう我の強い人かと思っていたから思わず驚いてしまう。
「……なんだよその顔。俺の顔になんか付いてるか?」
『あっ、いえ。……いや付いてるっちゃ付いてますけどね。絵の具が』
「ああ、これはいつものことだから気にすんな」
めっちゃ気になります、なんて軽々しく言えるわけもなく、とりあえず真面目にリクエストというか、その公演の内容を話してみる。
「_____……大体わかった。今すぐ描くからそこで待ってろ」
もうデザインが決まったのだろうか?
公演の内容を聞いただけで思い付くだなんて凄いなぁ……。
私は芸術というモノの知識はないけど、きっとこの人には才能というモノがあるのだろう。
そう考えながら部室に並んである作品を見てみると、そこには色んな世界があった。
一つ一つが個性を持っている絵。
専門家でもない私はこれのどこが凄いのかは上手く言えないけれど、全ての絵が色褪せない色で輝いていた気がした。
『これって、全部先輩が描いたやつなんですか?』
「……まぁな。どれもつまらねぇ絵だろ」
『そんなことないですよ。
こういう知識とかはないので周りからはどう見えるのかはわかりませんけど、私はここに並んである絵は全部好きです』
「!!!……そうか」
正直に感想を述べたら先輩は驚いた反応をしたけど、すぐに興味を失せてしまったかのように絵を描くことに集中してしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 21人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
