【3】立場逆転 ページ5
『お疲れ様。意外と退場するのが早かったね?』
「うっさい、これもパフォーマンスの一つなのっ!!!」
遊兎はニヤニヤしながら煽る私に噛み付くように言い訳をする。
……まぁ、それも演技だろうけど。
「ひみはもっと目立ちたかったのにぃー!!!!
もうプンプンだよー!!!」
「……ごめんね、ひみちゃん」
腕を上下に振り回すひみちゃんに表情を変えないまま謝る湊川さん。
端から見れば謝る気がないようにも見えるが、これでも彼はちゃんと謝っているつもりらしい。
つまり湊川さんも遊兎や九頭竜先輩のように不器用で、彼は表情を作るのが苦手なだけ。
もちろん私達はそんな彼を咎めるつもりは全くない。
「まぁ今回は練習通りにやっただけだからね。
対抗戦では負けない的な」
『はいはい、言い訳はもういいよ』
未だに言い訳をする遊兎の肩をポンポンと軽く叩きながら子供をあやすように言うと、遊兎は「う"ぅ"ー」と唸るようにして私を睨む。
『そんなに怖い顔してると可愛い顔が台無しだよ?』
「俺は男だからそんな事言われても全然嬉しくねーよ!!!
普通それは女の悠香が言われる側じゃないの!!!?」
『褒めてるのに……。てゆーか私なんかより遊兎の方が何百倍も可愛いに決まってんじゃん!!』
「なんでお前はいつもそうやって俺を美化してるの!!!?
つーか俺って一応悠香の兄だよな!!?」
美化したつもりはない。
だって以前、周りの女子が「赤間君可愛い」と言って彼に黄色い声を上げていたのだから私は間違っていない筈だ。
『兄も妹も関係ないよ。私はただ遊兎を可愛がりたいだけ』
「関係ないっていうか立場的なのが逆になってるよな!!!?
妹が兄を可愛がるって何!!!?」
「赤間っち達の漫才は相変わらず面白いねー湊川ちゃん」
「……うん」
「『漫才じゃない!!!!!』」
ニコニコしながら聞いていただけの二人が嬉しそうに私達の会話を漫才だと言うと、私は真剣な顔で。遊兎はキッ!!と二人を睨むようにしながら否定する。
全く、こちらは本気で言っているというのにそれが漫才だなんて失礼にも程がある。
そんな事を口にしたらまた遊兎に怒られてしまった。
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