双子の豹【ミカグラ学園組曲】 (ページ31)

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【29】明るい弟と真逆な双子の豹ページ31

～悠香side～

_______昔、とある物語が「祝福されずに生まれてくる子供なんて存在しない」と私達兄妹に教えてくれた。

でも私の双子の兄は、当時から今までずっと、それを全く信用していなかった。

誰にも好かれて、友達の数は数えきれない演劇部代表の赤間遊兎。

私の兄がそんな自分を演じるようになったのは、一体いつからだっただろうか?

昔を思い返すと、私達の側にはいつも弟がいた。

「ゆと兄ちゃん、悠香姉ちゃん!!
ぼくが親戚のおじさん役をやるからゆと兄ちゃんはミラクルマン役で、悠香姉ちゃんはぼくに人質として誘拐されちゃった小学生役ね!!」

「ごめん、全然わかんない。何ごっこなんだそれ。
親戚のおじさんってミラクルマンにどう絡んでくるんだ!!?
人質って、親戚のおじさんは悪役なの!!?」

『私、誘拐されちゃうの……?』

弟は天真爛漫で人懐っこくて、兄である遊兎と姉である私のこともごく普通に慕って甘えてくる弟だった。
ただ、ごっこ遊びをする度に変な配役を考えるのだけはやめてほしかった。

でも今考えると、遊兎の演技への対応力の原点はそれだったのかもしれない。

「うーん、簡単に説明するとね、ミラクルマンの正体を偶然見ちゃって、それをネタに暴露本を出版してお金を稼ごうとする親戚のおじさん役だよー。
で、それを阻止しようとするミラクルマンに邪魔されないように親戚のおじさんは人質も用意してるの!!」

「『そいつ最低かよ!!』」

私達はきゃっきゃと笑う弟の頭を撫でることが好きだった。

でも遊兎は、どんなに楽しいことがあっても、感情を表に出すのが苦手みたいで、私と弟が笑い合う中、遊兎だけはいつも笑ってくれなかった。

だから私は何度か遊兎に笑ってみてとお願いしてみたけれど、その時試した彼の笑顔はどれも引きつってしまっていた。

公園に遊びに行けば、すぐに知らない子達と打ち解けて友達をたくさん増やして帰ってくる弟。

同じように遊びに行っても、誰にも声を掛けられないまま、輪の中に入ることさえもできなかった兄と私。

きっとそのせいだろう。両親はいつも弟ばかりを可愛がっていた。

けど私は女の子だからという理由で、ママは自分好みの可愛い洋服を私に着せて、可愛がってくれた。

でも私はママと好みが違っていて、ママはフリフリのスカートとかをいつも私に着せたがっていたけど、正直私は動き易いズボンの方が好きだ。

だけどその時ぐらいしかママは構ってくれなかったから、私はそれをいつも我慢していた。

その反動でなのか、今ではスカートを履くのを全力で拒否している。