双子の豹【ミカグラ学園組曲】 (ページ13)

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【11】回れ右してここから今すぐ素直に帰る的な人の役ページ13

「一宮ちゃんはどんな事がしたいの?
こういう役がやりたいとか、照明的なのに興味があるとか曖昧でいいんだけどね」

遊兎が一宮さんにそう問い掛けると、彼女は目を閉じてイメージを膨らませていた。

「女の子部員全員にひらひらの衣装を着せて、みーんなお姫様。それで私が一人だけ男装して王子様役なんてどうだろう?
できたら私のことを取り合うような台本がいい。
R指定の台本だとより素晴らしい。
演技をやる人は役と現実を混同するくらいまで感情移入するって聞いた事があるから、実際に過ちが巻き起こってしまうかも…!!?
ああ、夢が広がる……!!!ああ、男子は全員裏方ね。
赤間君には特別に、王子の家(3LDK)のトイレ掃除という大役をあげよう!!私ってば太っ腹過ぎ!!?
太ってはいないけど、決して入学前の休み期間に油断して食べ過ぎて太ったりなんかはしてないけども!!!」

……なんか一人で妄想し始めちゃったよ?
しかもそれを無意識なのかはわからないけど口に出しちゃってるよ?

私は当然ひらひらの衣装もお姫様役もお断りします。
あとR指定の台本は絶ｯｯｯ対に用意できないよ。

……最後の謎の言い訳は知らないけどね。

とりあえずわかったのは、この子は無類の女の子好きなんだって事だけ。

それ以上は怖くて知りたくない。

そして一宮さんは一人でうんうんと納得するように頷き、閉じていた目を開けた。

すると彼女のすぐ側にあったのは、私の双子の兄の顔。
ここからだと遊兎の表情は確認できないけど、不自然なくらいにニコニコと憐れむように微笑んでいるのが容易に想像できる。

……っていうか兄よ、それ近過ぎやしないかい?
もう少しで一宮さんの顔に当たりそうなくらい近いよ?

「考えてる事口に出ちゃってたよ?
残念だけど演劇部としては一宮ちゃんの野望……というか欲望は受け入れられそうにないや。
……俺もトイレ掃除的な役作りはちょっとできそうにないしさ」
「あれー!!!?」

「そうだなぁ……。
ならさ!!一宮ちゃんには『回れ右してここから今すぐ素直に帰る的な人の役』をあげようね」

遊兎はそう言って一瞬だけ私にアイコンタクトをする。

……ああ、わかったよ。アレをやれってことね。