四十八通目 ページ49
同刻
「それで、多忙な俺に要件があると？珍しいじゃないかエミさん」
「グルさんあんた仕事押し付けてばっかで多忙やないやろ」
「落ち着けトン氏、明日やる」
総統室へ赴いたエーミールは、やけに真剣な表情で
──それでいてどこか顔を曇らせていた
それを知ってか知らずか、同室で仕事をしていたトントンとかけあいを楽しむグルッペン
めったに総統室へ来ないエーミールが来たといえど、さほど重要な理由があってきたとは思っていないのだろう
いつものように、何かを企んでいるような笑みを浮かべる
「それで、どうしたんだゾ」
本腰を入れて会話を始めたグルッペンが視線を向けたのは、エーミールの手にある数枚の紙
ちらりと見えた内容は薄い鉛筆のようなもので書かれており、遠目では内容まで確認することができない
それでもまだ興味はわかないのか、グルッペンは同じく同室に篭り仕事をするオスマンに視線を向けた
代わりに受け取って読んでおけという意味合いを込めた目線
オスマンは納得したように「全く、あとでちゃんと読んどいてな」と言って、呆れながらエーミールに近づいた
「そんでエミさん、なんなんそれ」
本来の内容に戻ったことにより、エーミールの体にはどっと緊張感が押し寄せる
軽い態度で話せるものではないのだ
──まだ事の重大さに気づいていない三人には到底理解できない事の重さ
「前にリト国と戦争したとき、あっちの戦略が問題まみれやったの覚えとります？」
「まぁ、そうだったなぁ」
「これは、どんな戦法取ってたらあっちが勝ってたかとか、それをとられた場合にこっちがどうすればよかったかとかかいてあるもんです」
壊れ物を扱うかのように、紙の束をオスマンへと差し出す
渡されたオスマンは、特に何も考えることなく読み始めた
しあし、乱雑な字で書かれたそれを少しずつ読み進めるたびに、その顔は暗く陰る
「エミさん。もしこれやられて、対策なかったら？」
「確実にこの国が滅んでた」
二人の会話の思い空気を悟ってか、グルッペンは目に暗い光を灯す
「見せてみろ」
海を沸かす程低い声でそう呟くと、オスマンからそれ奪うように取った
彼もまた、羅列された文字を脳裏に刻むたびに、表情を険しくさせる
その顔から読み取れる感情は、どうしようもない喪失感と、自分がこの思考へ至れなかったことへの敗北感
そして微かな畏怖だった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1277人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Rin - ススススワンプマン？！ (2021年2月28日 12時) (
レス) id: ee43a6ccd3 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 夢花(仮垢)さん» コメントありがとうございます。総統はあくまで「総統」で幹部じゃないと考えているので、十一ですよ！ (2019年12月4日 18時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - あの、もしniさんとciたんを含めないのであれば、既存の幹部（総統を含めていると仮定すると）12人な気が…(11人と記載されていたので)(総統様含まれてなかったらすみません)(続き読んできます←) (2019年12月4日 18時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - mikazukiさん» ありがとうございます。お言葉どおり、暖房と布団を駆使してあったまりながらじゃんじゃか更新させていただこうと思います (2018年12月18日 23時) (レス) id: d493129e91 (このIDを非表示/違反報告)
mikazuki - めちゃくちゃ面白いです！！続きがとても気になります！最近寒いので体調管理をしっかりしてどんどん更新してください！ww待ってます (2018年12月18日 22時) (レス) id: 1c820def12 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
