十二通目 ページ13
最初に覚えたのは、失望。他者と変わらぬおべっか、媚びへつらい、権力者に臆して細々と何か言葉を紡ぐその姿
常人と同じ様なことしか連ねないうえに質問を質問で返す
『なぜ呼ばれたか』『あの噂はなんだ』
質問で返されたそれに、さらに質問を重ねたくなった。なぜ皆々、グルッペンに対して同じような態度しか取らないのかと
親しい幹部は除外するとして、なぜ一様に媚びたり恐れたりしかしないのか
偉いからと、進言をしないのは何故か。言わねばわからないこともあるというのに
目の前の彼女も一端の輩と変わらず、辺鄙な人間に落ち着いたのかと苛立ちを覚え、グルッペンは追い払うように真実を明けた
ゾムを呼んで連れて帰らせよう。政策についてはやはり、エーミール等を頼るのが懸命か
彼女に告げながら、先々のことを考える
この女は扉を開けてから、一度たりとも視線を合わせようとしない。怯えているのか、肩が震えているのが見える
彼女ならば面白い行動を起こしてくれるのではと期待したが、結局はただつまらないだけで
──凡人だったのかと、そう、思っていた
しかし
『ふざけないでください』
いきなり顔を上げた少女は、その紅蓮なる双眸でグルッペンを見る。いきなりなんだこの女はとは、思わず眉をひそめた
両隣に立つトントンとオスマンが息を呑む音が聞こえた気がする
彼女はそれに見向きもせず、おもむろにポケットの中に手を入れて、緑色の──硝子片のようなものを取り出した
『ならこれは、何故壊れたのですか？この国の民が手製込めて作ったはずが、今回の件のせいでこの有様です。理由があるとすれば致し方ありません。本当に私がスパイだと思われていたのなら、非があるのは私ですので。しかしなんですか。閣下がお流しになった嘘？冗談も大概にしてください』
震えながら言葉を紡いでいるのは先程と変わらない。変わったのは、その気風と声が震える意味である
怒りによるもの、体が揺れるのは武者震い。グルッペンを睨むその目は、王獣に吠える餓狼か何かか
トントンやオスマンはおろか、グルッペンでさえ口を挟めないほどの剣幕で言葉を吐き出し、息を切らすその姿を一度よく見た
どこか見覚えのある、秀麗な容姿と精悍な風貌
しかし常人に染まりきった気風
チグハグな素材を見つけたという喜びが、グルッペンの全身をかけめぐった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1277人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Rin - ススススワンプマン？！ (2021年2月28日 12時) (
レス) id: ee43a6ccd3 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 夢花(仮垢)さん» コメントありがとうございます。総統はあくまで「総統」で幹部じゃないと考えているので、十一ですよ！ (2019年12月4日 18時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - あの、もしniさんとciたんを含めないのであれば、既存の幹部（総統を含めていると仮定すると）12人な気が…(11人と記載されていたので)(総統様含まれてなかったらすみません)(続き読んできます←) (2019年12月4日 18時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - mikazukiさん» ありがとうございます。お言葉どおり、暖房と布団を駆使してあったまりながらじゃんじゃか更新させていただこうと思います (2018年12月18日 23時) (レス) id: d493129e91 (このIDを非表示/違反報告)
mikazuki - めちゃくちゃ面白いです！！続きがとても気になります！最近寒いので体調管理をしっかりしてどんどん更新してください！ww待ってます (2018年12月18日 22時) (レス) id: 1c820def12 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
