四百二十九通目 ページ30
「ここが我々刻国指揮官本部だ」
階段を幾度も登り、長い長い廊下を進み
無遠慮な歩幅に食らいついて案内されたのは、会議室のような場所だった
荘厳な扉を開けば、数名の──指揮官と思われる人間が、資料等を広げて話し合いをしている
戦場のセの字もない内地
逼迫した様子も、掃討の意志すら見受けられない場所
Aは瞬間、様々な思いが頭の中をかけめぐった
指揮官なのに、何故戦場の末端にすら居ないのだ？
室内の男指揮官共は、揃って傲慢そうであるか、肥えた豚のような体型をしている
明らかに、日頃から戦闘に備えて訓練している様子はない
これが司令官なら、まだ理解は及ぶ
彼等は基本戦場の最後尾で優秀な戦略を練り上げるのが仕事であるから、武器を持つ機会などそうそうない
──あってはいけない、のほうが正しいか
だがしかし、指揮官となれば別だ
戦場に繰り出すその身は、敵から狙われ易いと言っても過言ではないものである
それなのに、身の脂肪を搾ることは愚か
──そもそも、戦地にすら赴かないと？
「……申し訳ありません、来るべき場所を間違えたようです。失礼します」
Aはそう言って、数歩踏み入れた足を止めて、退室しようとした
既に閉じられた扉に手をかけて開こうとすると、案の定、先程の部下の男に肩を掴まれる
「ここだ、お前はここで仕事をするんだ」
「いえ、きっと何か通達違いがあったのでしょう。指揮官本部へは自分の足で向かいますので、お手を煩わせはしません」
「ッおい貴様、人の話を……」
男の手に、容赦のない力が入る兆しが見える
それを予期したAはその手を払い除け、手垢で汚れた肩を嫌そうにぱっぱとはらった
「ここは、指揮官本部ではありません。何をおっしゃっているんですか？」
「それは貴様の方だ、腑抜けが」
Aの背に、罵倒がかけられる
振り向くことなく後方へ視線を向ければ、恰幅の良い男が、苛立ったように顔を歪ませていた
──知らない男だ
Aが居た二年前は、居なかったのだろうか
何にせよ、生憎と存じ上げない
「貴方は──」
「我々国指揮官長だ、上司の名前ぐらい覚えろ愚鈍が」
名を聞こうとしただけだというのに、当たり前のように付属される不愉快な言葉
──結局、名乗りはしていないし
「総司令官より司令を受け、こちらで発信する。それが指揮官だ。自分の仕事ぐらい把握をしろ」
何を言っている？
この男は、何を、言っているんだ？
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アンバ(プロフ) - (みたら士)神様､小説を創ってくれてありがとうございます｡ (2021年5月9日 1時) (
レス) id: 04b4947088 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 後輩くん…！個人的にはキャラ揃って大喜びしてます。最近更新多くて通知を見るたびに発叫してます。ですが、無理はなさらないように… (2021年5月9日 1時) (レス) id: 6bc5efe30d (このIDを非表示/違反報告)
シャノ(プロフ) - 最近更新増えて嬉しいです。 彼ですかね、、、！ 更新ありがとうございました！ (2021年5月8日 22時) (レス) id: f15c4b37e0 (このIDを非表示/違反報告)
Contrast(プロフ) - 本当にお話一つ一つが素敵で大好きです！無理のない更新で頑張って下さい！ (2021年5月8日 7時) (レス) id: 8384124a90 (このIDを非表示/違反報告)
アンバ(プロフ) - 本当に大好きすぎる…！読者をどれだけこの作品はびっくりさせてくれるんですか！更新ありがとうございます！！！ (2021年5月8日 4時) (レス) id: 04b4947088 (このIDを非表示/違反報告)
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