四百二十八通目 ページ29
我々国中央区にたどり着く頃、Aは違和感を覚えていた
おかしい
指揮官というものは、戦場に立って指示を出す存在だ
ときにはともに戦い、兵士達と一体となって動くべきである
それだというのに、Aが今向かっているのは、我々国の城方向
一度経由するにしては、時間の無駄がすぎる
戦時下では一分一秒が命
瞬きする間に状況は移り変わり、優勢にも無勢にもなるものだ
然らば、何よりも駆けつけることが先決
だが今名前が向かっているのは、寸分違わぬ本拠地なのだ
戦場とはかけ離れた内地
「……兄さん、私は今、何故ここに居るのでしょうか？」
発しながらも理解するほどの、怒りを帯びた声音だった
実際、A自身、湧き上がりそうな憤怒を抑えながらに会話を試みている
「……まあ、着けばわかる」
やけに含みを持たせたような言い方をする兄さんに、Aは当然良い予感はしなかった
指揮系統がぐらついている？
まさか、な──
無機質な塔が幾つも連なる我々の城
久方振りの帰還は、その容貌が何処か変わっているように思わせた
改装工事でもしたのだろうか
前の姿を余り覚えていないから、確証は無いけれども
Aは顔色が見えなくなるほど深く、ローブのフードを被った
車から降りると、Aと兄さんを待ち構えるように、兄さんの部下と思わしき仏頂面の男が立っている
大腕に抱える、ナイフや小型銃等
「んじゃ、俺はここで。頑張りやヴィル」
兄さんはそれらを奪うように受け取ると、急くような足取りで立ち去っていった
彼が向かう先にあったのは、確か馬小屋だっただろうか
きっと、戦場へ向かうのだろう
幹部──しかも兄さんほどの実力者ならば、その存在一つが今後を左右するはずだ
他の幹部等も、もう既に戦いへと駆り出されているはず
Aも気を抜いている暇はない
「……お前が、士官候補生上がりか」
残った兄さんの部下が、何処か軽蔑したような目をAに向けた
心外だと思いながらも口に出すことはしない
逆らえば、立場が危ういものだから
Aは彼に敬礼を向けと、はきはきとした口調を心がけて
「はい。ヴィルへルミナ・アレクセイと申します」
と、自己紹介の言葉を述べた
「……指揮官本部へ案内する。ついてこい」
しかし男は興味の色すら見せること無く、歩幅も緩めずに歩きだしてしまう
──指揮官本部？城に、そんなものがあると？
嫌な予感がする
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アンバ(プロフ) - (みたら士)神様､小説を創ってくれてありがとうございます｡ (2021年5月9日 1時) (
レス) id: 04b4947088 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 後輩くん…！個人的にはキャラ揃って大喜びしてます。最近更新多くて通知を見るたびに発叫してます。ですが、無理はなさらないように… (2021年5月9日 1時) (レス) id: 6bc5efe30d (このIDを非表示/違反報告)
シャノ(プロフ) - 最近更新増えて嬉しいです。 彼ですかね、、、！ 更新ありがとうございました！ (2021年5月8日 22時) (レス) id: f15c4b37e0 (このIDを非表示/違反報告)
Contrast(プロフ) - 本当にお話一つ一つが素敵で大好きです！無理のない更新で頑張って下さい！ (2021年5月8日 7時) (レス) id: 8384124a90 (このIDを非表示/違反報告)
アンバ(プロフ) - 本当に大好きすぎる…！読者をどれだけこの作品はびっくりさせてくれるんですか！更新ありがとうございます！！！ (2021年5月8日 4時) (レス) id: 04b4947088 (このIDを非表示/違反報告)
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