四百三十六通目 ページ37
頬を撫でる生温い風にあてられながら、Aはローブのフードを目深に被った
目指すはAの因縁の地
対ガヴィル前半戦の戦場、ガニマール平原
森林の合間を抜けて前線に上がり、撹乱を行うことが目的であるけれども、先ずは状況の把握が優先事項である
どの隊がどのように行動をし、誰と刀を向けあっているのか
──Aが居た頃とは幾分か隊の編成も違うようで、正直なところ上手く敵を誘導できるか心配なところではあるけれども
ふと、思い悩むAの視界の下で、乗り付けた白馬がブルと鼻を震わせた
「貴方は確か……げどうまる、でしたっけ？」
不可思議な命名をしているものだと思いながら問うが、白馬は何も返答しない
考えてみれば当たり前だ、人外が人間の言葉を発するわけがない
「すみません、外道丸。所有者──いえ、家族や友人というべきでしょうか──そんな人物から引き離してしまって。遺憾に思います」
急く足取りのままにとは言え、外道丸にも、あの時すれ違った男性にも、失礼な行いをしてしまったものだとAは猛省していた
きっとあの軍服の男性は、戦線に上がる手段を失ってしまったことだろう
よくよく考えてみれば、彼が即戦力たる人材であった可能性も存在するのだ
階も名前も、容貌すら知りはしない相手ではあったけれども、Aが知らぬ実力者であったのならば多大な痛手を負ってしまうことになる
目先の利益、最優先に執り行うべき行動に目を取られ、周辺の管理を怠るなぞ、指揮官の風上にもおけない
笑止千万
それが戦時下であればなおのこと
一つの判断が何か重大な危機を呼び起こすかもしれない
疑似的なバタフライ効果のようなものだろう
「……私が必ず、戦勝を呼びます。なのでどうか、今だけは、私に力を貸してはくれませんか？外道丸」
──当然、外道丸は何も返答してきはしなかった
しかしその代わりとなるかのように、彼はより一層駆け足で、俊敏にAを乗せて走るのである
戦場に向けて、その四駆で風を切る
Aはそんな白馬に背中を押されたような心地を覚えながらも、死線への心構えを持つのだった
──向かう戦場の片隅で、一つの命が消えかけているとも知らずに
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アンバ(プロフ) - (みたら士)神様､小説を創ってくれてありがとうございます｡ (2021年5月9日 1時) (
レス) id: 04b4947088 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 後輩くん…！個人的にはキャラ揃って大喜びしてます。最近更新多くて通知を見るたびに発叫してます。ですが、無理はなさらないように… (2021年5月9日 1時) (レス) id: 6bc5efe30d (このIDを非表示/違反報告)
シャノ(プロフ) - 最近更新増えて嬉しいです。 彼ですかね、、、！ 更新ありがとうございました！ (2021年5月8日 22時) (レス) id: f15c4b37e0 (このIDを非表示/違反報告)
Contrast(プロフ) - 本当にお話一つ一つが素敵で大好きです！無理のない更新で頑張って下さい！ (2021年5月8日 7時) (レス) id: 8384124a90 (このIDを非表示/違反報告)
アンバ(プロフ) - 本当に大好きすぎる…！読者をどれだけこの作品はびっくりさせてくれるんですか！更新ありがとうございます！！！ (2021年5月8日 4時) (レス) id: 04b4947088 (このIDを非表示/違反報告)
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