三百四十三通目 【水に燃え立つ蛍編】 ページ44
この一年間でAの身に、二三不思議なことが起こった
いや、総まとめにしてしまえば、一つと言い切ることもできるのだけれども
小分けにした一つ目の事項
それは、Aの身体的変化だった
一房のみ白かった、濡鴉の髪の毛
しかし環境や体調の起伏に応じてのものなのか、彼女の髪は総じて白くなってしまったのだった
特にこれと言って、何か不自由があるわけではない
それにより体が虚弱になっただとか
そういうことではないのだ
ただ少し、本当に自身がA・ヴィジィールから、ヴィルヘルム──ヴィルヘルミナに変わってしまったような気がして
かばかりか、寂しさが湧いているのである
もう一つの変化は、彼女に直接的に関わることではなかった
その引き金となったのは、実験中の出来事である
【治癒】のポーションを作ることに明け暮れていたAは、それと同時に鏢の作り変えも行っていた
今のままでは飛距離にも制限があるし、暗器として隠すには使い勝手が悪い
生の刃物をそのまま腕に巻きつけるというのも、いささか危険が過ぎる
故にAはポーション制作と並行して、何か──何とはないが、飛距離を伸ばしたり扱いやすくする術を探していた
扱いに関しては慣れ熟れが影響しているけれども
──何にせよAは、様々なものを実験机の上に置き、研究していたのだ
そんなある日のこと
実験中にAは、ポーションが入っていた瓶を数本、誤って倒してしまった
机に流れる、様々な色の液体
その雫はポタポタと机から地面に垂れ、水音がよく響く
Aは慌てた
溢してしまって怒られる、などではない
ポーションとポーションを混合させたらどうなるか、不明だからだ
今までそんな実験を行ったことはない
何が起こるかわからない故に、危険なのである
そして今、その液体に浸かるように、卓上に置いておいた鏢がびっしょりと濡れて、水たまりの中にいるのである
危険、つまり触れることができない
溢したポーションの拭き取りを行うまで、鏢の状態を確認すること叶わないのである
幾重にもゴム手袋を重ね、Aは雑巾でポーションを拭いた
一滴すら残さず必死に拭き周り、雑巾は捨ててしまった
そうしてようやく、拾えた鏢
どこか変色──淡く光っているように見えたが
Aはただ、その道具が無事であることに、よろこぶのみである
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みたら士(プロフ) - 名無しの××さん» ありがとうございます……適度に休憩しつつ更新させていただきます、お待ちください！ (2020年1月3日 23時) (
レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
名無しの×× - この小説が大好きです。大変だとは思いますが更新頑張ってください。応援しております。 (2019年12月29日 15時) (レス) id: f98b79cb93 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 妖那。さん» ついにですね……でももう少しで�柴�りそうになっちゃいました。ご心配ありがとうございます、ゆるりと更新していこうと思います (2019年12月22日 21時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - ブンブンさん» 満を持して登場です、続編来ちゃいました (2019年12月22日 21時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
妖那。(プロフ) - ついにVIIですね…!体調を崩さない程度に更新頑張って下さい！ (2019年12月20日 22時) (レス) id: 4a3820ee7b (このIDを非表示/違反報告)
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