三百四十一通目 ページ42
「終わり終わり終わり！はい終了！武器下げてヴィル君は木から降りてきて！」
木の下でくられ先生があわあわと手を振っているのが見える
その後ろでは、兄さんが腕を抑えて──
「ッ兄さん！！」
思わず木から飛び降り、彼に駆け寄っていた
手首から左腕にかけて、浅く長く裂けた彼の左腕
右腕は紐できつく縛られた故に青っぽくなり、紐のあとが残っている
忘れていた、これは殺し合いでもなんでもない、訓練だ
ただ少し彼が強いからと子供のようにムキになって
自分はとんだ大馬鹿者だ
「あの、止血……止血、を」
「んーあー別にこんなん大したことやない、安心してええで」
「ですが、その」
うまく言葉にまとめられない
だって彼の左腕の傷は、自身が右腕に作ったものと、全く似ているのだから
その傷の痛みも、不自由さも知っている
故に、これから旅立つ彼にこんなことをしてしまったことを悔いている
恩師に牙を突き立てたことを恥じている
シャオロンやゾムの入れ知恵からなった、あくまで付け焼き刃
荒削りなのに粋がって、一般の人を傷つけるだなんて言語道断だ
武器を持つ資格なんてない
「それにしてもすごかったなぁヴィル！あんな早う動くなんて思わなかったからびびったわ」
ふと自身の頭に、ぽんと優しく手が置かれた
うじうじと下を向いていた視線を上げれば、にこやかに笑う兄さんの姿が
実の兄のように笑う彼
「ほんと、僕も驚いた。というか二人とも、僕がどれだけびっくりしたかわかってる？！初っ端からなんかガチだし、いつの間にか血とかでてるし、かと言って止めに行ったら巻き込まれそうだし！」
堰を切って溢れだす、くられ先生の愚痴
彼にも迷惑をかけてしまったなと、また申し訳ない気分に苛まれる
しかし何処か、二人の目はうれしそうだった
「あの二人とも、なんで笑っているので……？)
そんなに傷だらけになって
そんなに冷や汗を流して
それなのに二人は笑っていた
「そりゃまぁ、楽しかったしな。久々にこんな体動かしたわ」
「うーんまぁ僕も楽しかったっちゃ楽しかったね。でも二人ともやりすぎ」
──怒られなかったことには、正直ホッとしている
自分がわるくないというわけではない
でも怒られるのは得意じゃない
安堵した心とともに、またふと思った
一体に兄さんという人物は、なんなのだろうか？と
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1833人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みたら士(プロフ) - 名無しの××さん» ありがとうございます……適度に休憩しつつ更新させていただきます、お待ちください！ (2020年1月3日 23時) (
レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
名無しの×× - この小説が大好きです。大変だとは思いますが更新頑張ってください。応援しております。 (2019年12月29日 15時) (レス) id: f98b79cb93 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 妖那。さん» ついにですね……でももう少しで�柴�りそうになっちゃいました。ご心配ありがとうございます、ゆるりと更新していこうと思います (2019年12月22日 21時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - ブンブンさん» 満を持して登場です、続編来ちゃいました (2019年12月22日 21時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
妖那。(プロフ) - ついにVIIですね…!体調を崩さない程度に更新頑張って下さい！ (2019年12月20日 22時) (レス) id: 4a3820ee7b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
