二百八十八通目 ページ39
「私も、まさかと思ったよ」
その異常は、火を見るよりも明らかだった
紫に変色してしまった、指先から肘にかけての部位
刀傷があった場所は膿んでいた
しかし、おおよそ痛みのようなものはない
一体、これは
何なんだ、これはなんたんだ
自分の腕の延長？
そんなわけが、そんなのわけが
「っっっっっッッッ？！？！」
思わず口から吐き出しそうになった絶叫を、左手で抑える
強く強く口に手を当てて、吐き気や悍ましさを必死で止めた
自分のその腕を切り落としたいと思う感覚も、死ぬ気で制止する
「……見つけたとき、その腕から大量に出血していてね」
刃物で切ったような痕があったときは、驚いたよ
刀傷ってものは、簡単に塞がってくれないからね
それが長くて深ければ、尚の事
──A君はもしかして、毒かなにか服用したことがあるのかな？
きっとそれの後遺症だろう
体内の血液が著しく低下したことによる、身体異常
──これでも、最低限の処理はしたよ、もちろん
色々な薬品を投与して、炎症の拡大を防ぐにまでは至った
でも、でもね、A君
この傷は、この痕は
「現状、世界に存在する医学療法では、治ることがない」
──世界の技術は、君の怪我の修復に、追いつけない
冷酷無比に告げられた現実に寒気がして
吐き気がして
その両腕で我が身を抱き締めた
「これ、じゃあ、私は、一生このまま」
化物のような見た目をひきずって、生きて行けと？
「……世界の医学を持ってしても、それを治療することはできない。せめてだけれども、これ、使いなよ」
「ッッッッ！！」
手渡されたのは、黒い長手袋
無頓着そうな顔を引きつらせるAは、受け取りながらも、心の奥底で考える
復唱しなくてもわかっている、と
こんなもの、どうにもならないと
──難病に苛まれる気分だ
治る方法がないと知っているのに幾度となくその状況、余命を事細かに説明され
残された日々を無心で生きる
Aはこれで死ぬわけではない
しかしその変体を、世俗の目に晒せるか？
──無理だ、恐ろしい
「ッッッじゃあ、どうすればいいっていうんですか」
「──私は、科学者だ。科学は、全てを解決する」
「ねぇ、A君」
「君の手で、世界に革命を起こすほどの回復薬を、作ってみないかい？」
それは、Aの人生を変える、一言だった
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bh(プロフ) - 更新ありがとうございます...！続きとても楽しみにしてました。いよいよ主人公が仲間の一部と接触してとてもハラハラする展開で、もう続きが気になります....！とても面白い作品を書いてくださりありがとうございます。これからも末永く応援しております。 (2021年5月9日 14時) (
レス) id: 5ca24da818 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - FUJIさん» コメントありがとうございます……長い期間読んでいてくださったんですね、感謝しかありません。最近はかなり順調に更新できていますので、どうぞお楽しみください (2019年12月24日 19時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
FUJI(プロフ) - 初めまして！最初からずっとコメントしたくて勇気が出なかったのですが、ﾊﾗﾊﾗの展開で毎日通知を開いてしまうほど好きです(土下座)これからも更新楽しみにしております！ (2019年12月16日 22時) (レス) id: eb5fc7d995 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 茶葉さん» その長年と比べてまで褒めてくださり……ありがとうございます！適度に待ち時間というわくわくを提供しつつ、更新頑張ります…… (2019年12月16日 20時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 歌い手総推し！&外資系と書記長寄りの箱推し！さん» 明日と言わず、明後日明々後日も頑張っちゃってください( 'ω' )/ (2019年12月16日 20時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
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