二百六十四通目 ページ15
いくらか走った
Aの瞳はようやっと落ち着きを取り戻してきて、白んだ視界も収まった頃合い
切れ始めた息は肩で調節をして、Aは森林の中を闇雲にかけた
本部にいたまま戦闘となっていたらきっと、急患処置等に影響を及ぼし、さらなる大打撃となっていたことだろう
──それだけは、敗戦だけは避けなければならない
きっともう、アルプトラウルムやその他各国に早馬が届いているだろう
助力をしてくれるかはわからない
それでも数カ国のうちのどこかは、力になってくれるはずだ
そうなるように、かねてからオスマンが外交を重ねてきていたのだから
──それならばAは、時間稼ぎにでも
糧にも礎にも足場にも土台にもなってやろう
そんな、覚悟でいた
──何処かその身を、震わせながら
「ッくそ」
木の幹を越え、草合いを掻き分けて走りながら
なんとなく横目で後方を伺えば、居た
先程Aと刃をかわした、その敵兵が
例えAが新人であろうとも、その身一つで一国の幹部を相手どろうとしているということは
よっぽどの実力者の自信過剰か
はたまた戦場に紛れ込んだ阿呆か
──いや、きっと最前者なのであろう
呼吸を乱すことなく足早に、しかし突き放されることなくAをつけているのだから
日頃からかなり鍛錬を行っているはず
Aは脚力には自信がある、それのみならば同僚幹部にも引けを取らないつもりだ
──このままでは、分が悪い
いつか体力はつき、今空いている隙間も埋められるだろう
そうすれば、なけなしの力を振り絞って武器を振るうしかなくなるのだ
さらに劣勢を極めてしまう
──それならば、と
Aは踏み込んだ足を軸に後方を振り返ると、懐に帯刀していたナイフをとりだした
後ろ足に力を込め、加速
未だ駆けていた敵兵と接敵するのは、その直後のことだった
相手が軍帽の奥で目をむいたのが、すれ違う一瞬でもなんとなしに理解できる
交差ざまに、一撃
そのがら空きな脇腹を、ひと裂きする
「ッぐぅ？！」
後方から、敵の唸り声
刃先のリーチが短いだけに、敵の懐に飛び込む以外に攻撃方法はないが
一度間合いに入ればこちらのもの
鋭利な刃は敵の胴を容易に裂き、その刃先を鮮血に染めるのである
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bh(プロフ) - 更新ありがとうございます...！続きとても楽しみにしてました。いよいよ主人公が仲間の一部と接触してとてもハラハラする展開で、もう続きが気になります....！とても面白い作品を書いてくださりありがとうございます。これからも末永く応援しております。 (2021年5月9日 14時) (
レス) id: 5ca24da818 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - FUJIさん» コメントありがとうございます……長い期間読んでいてくださったんですね、感謝しかありません。最近はかなり順調に更新できていますので、どうぞお楽しみください (2019年12月24日 19時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
FUJI(プロフ) - 初めまして！最初からずっとコメントしたくて勇気が出なかったのですが、ﾊﾗﾊﾗの展開で毎日通知を開いてしまうほど好きです(土下座)これからも更新楽しみにしております！ (2019年12月16日 22時) (レス) id: eb5fc7d995 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 茶葉さん» その長年と比べてまで褒めてくださり……ありがとうございます！適度に待ち時間というわくわくを提供しつつ、更新頑張ります…… (2019年12月16日 20時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 歌い手総推し！&外資系と書記長寄りの箱推し！さん» 明日と言わず、明後日明々後日も頑張っちゃってください( 'ω' )/ (2019年12月16日 20時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
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