二百六十一通目 ページ12
死んでしまった仲間を、捨てきることができなかった
──だから今、彼のその腹部には、小さな風穴が空いている
見るも無惨な姿で発見されたのは、観測部隊隊員
マーク・ノエル、ノック・チップ、モン・テミシリー、その人だった
腹を斬られ、胸を刺され
──その脳髄を、撃ち抜かれ
杜撰な──痛々しい、戦闘の痕跡とともに見つかった
──川の、下流で
きっと彼等は痛かっただろう
冷たかっただろう、泣きたかっただろう
──それでもその身は、もう涙すら流すことができなかったのだろう
そう思うと鬱先生は、酷く悲しくて
──そしてそんなにも不愉快なことを行ったガヴィルが、酷く忌々しくて
殺意と焦燥の念を抱きながらも、鬱先生は爪を強く噛みつける
ストレス発散のようだった
──何もできなかった、到着が遅かった自分を、恨んでいたから
「……犠牲になったのはその人たちだけみたいだね。……あと三人は、きっと塔にいるんじゃないかな」
慰めではないが、そう、ひとらんらんが声をかける
温厚そうな声音
しかしその声は、怒りに震えていた
やはり彼であっても、こんな所業は許せないのだろう
やるせないのだろう
それでも、引き摺っていては仕方がないと
何とも思わないわけではない
だがしかし、戦争とは誰かが必ず死にゆくものなのだと
それは、悲壮感との決別を意味していた
「……こんな砂利の上じゃなくて……せめて草の上で、寝かせてやってもええかなぁ」
ぽつりと鬱先生がつぶやき、その言葉に僅かに目を見開きながら、ひとらんらんが頷いた
「うん、いいと思うよ……俺、部隊員のみんなと出発の準備してるから……終わったらきてね」
「おん、わかったわ」
去っていくひとらんらんの背を見送って、鬱先生は遺体に手を伸ばした
その身を横抱きにして、運んで
また川に戻り、運んで
──最後の一人を抱えて、高台へその体を置こうとしたときだった
パァンッという銃声
──鬱の腹を穿つ、弾丸
ゴポッと溢れおちる、口からの血液
「ッ大ちゃん？！」
駆けつけたひとらんらんが目にしたのは
肩で息をしながら血反吐を吐く鬱先生の姿と
──高台で横たえられる、三人の遺体だった
その血に伏せる四人──死んでしまった皆も、鬱先生も
どこかわらっているようで
──薄れゆく意識の中で鬱先生は
愛する者の笑顔を、思い浮かべていた
我々国幹部鬱先生
弱点は──【仲間】
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bh(プロフ) - 更新ありがとうございます...！続きとても楽しみにしてました。いよいよ主人公が仲間の一部と接触してとてもハラハラする展開で、もう続きが気になります....！とても面白い作品を書いてくださりありがとうございます。これからも末永く応援しております。 (2021年5月9日 14時) (
レス) id: 5ca24da818 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - FUJIさん» コメントありがとうございます……長い期間読んでいてくださったんですね、感謝しかありません。最近はかなり順調に更新できていますので、どうぞお楽しみください (2019年12月24日 19時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
FUJI(プロフ) - 初めまして！最初からずっとコメントしたくて勇気が出なかったのですが、ﾊﾗﾊﾗの展開で毎日通知を開いてしまうほど好きです(土下座)これからも更新楽しみにしております！ (2019年12月16日 22時) (レス) id: eb5fc7d995 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 茶葉さん» その長年と比べてまで褒めてくださり……ありがとうございます！適度に待ち時間というわくわくを提供しつつ、更新頑張ります…… (2019年12月16日 20時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 歌い手総推し！&外資系と書記長寄りの箱推し！さん» 明日と言わず、明後日明々後日も頑張っちゃってください( 'ω' )/ (2019年12月16日 20時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
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