二百五十通目 ページ1
倒木や地盤沈下で荒れてしまった森の中を、ゾム率いる斥候の四名が疾走していた
四足の馬に乗馬して身を屈め、可能な限りに息を潜める
いつどこから敵影が接近しても対処できるように
──回避行動、受け身、反撃が行えるように
最前を走るゾムは周囲に目を光らせ
その次を走る女人は懐に隠した武器に手を伸ばしつつ、手綱を握り
後方を走る二名は、警戒と共にそれぞれ右見左見をしていた
夕刻、準備を行なった後に直ぐ出発をした四名
今はもう深夜だろうか
馬を走らせて約五時間が過ぎる
未だに敵軍は観測されず、緊張が続く
そろそろ馬も疲労し、速度が鈍ってくる頃合いだ
休める場を見つけて小休憩をとるか、早々に敵軍を図らねば
──そう思っていた、矢先のことだった
「ッとまれ！」
味方うちに届く程の声で、ゾムが静止を投げる
──その視界奥、そろそろ森が終わるであろう場所
盆地へと続くその場に、人影があった
──無数の、装備を身に纏った兵等
我々国のものではなかった
休憩と際し、眠っているのだろうか
今なら──殺せるかもしれない
しかしゾムは、武器を取りはしなかった
「ッ隊長、いかがしますか」
部下も勝手に突入することはせず
ゾムの指示を待つようにして、馬を止めていた
彼への信頼感ゆえの行動だろう
即突は身を滅ぼしかねないことを、わかっているのだ
「……お前らはここで引き返せ。また何時間か走れば、休憩中の本隊か小隊かには出会えるやろ。そうしたら、伝えろ」
──死ぬ覚悟と、殺戮と殲滅をする覚悟、しとけってな
「ッ──それは、一体」
「……相手の詳しい組織構成はまだわからん。けどこんないつ戦争が始まるかわからんような状態で不貞寝できる言うことは、よっぽどの自信があるか、ただの馬鹿か、監視しとるやつがいるか言うことや。油断ならんわ」
「御意。ゾム隊長は、いかがなさるので」
「俺はこれから、観測部隊の救援に向かう。こりゃもしかしたら全滅しとるかもしれん……小隊の到着なんて待っとったら、それこそ確定で死ぬ」
奥に控える敵から目を逸らすことはなく、ゾムは憎々しげに言った
戦うことは好きだが、今は分が悪いのである
「……それでは、我々は本隊の元へ向かいます」
「おう」
「どうか、ご達者で」
「……お前らも」
──死ぬな
その言葉を合図に、散開
部下三名はもと来た道へ馬を走らせ
ゾムは左方へ曲がりつつ、観測所を目指すのだった
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bh(プロフ) - 更新ありがとうございます...！続きとても楽しみにしてました。いよいよ主人公が仲間の一部と接触してとてもハラハラする展開で、もう続きが気になります....！とても面白い作品を書いてくださりありがとうございます。これからも末永く応援しております。 (2021年5月9日 14時) (
レス) id: 5ca24da818 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - FUJIさん» コメントありがとうございます……長い期間読んでいてくださったんですね、感謝しかありません。最近はかなり順調に更新できていますので、どうぞお楽しみください (2019年12月24日 19時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
FUJI(プロフ) - 初めまして！最初からずっとコメントしたくて勇気が出なかったのですが、ﾊﾗﾊﾗの展開で毎日通知を開いてしまうほど好きです(土下座)これからも更新楽しみにしております！ (2019年12月16日 22時) (レス) id: eb5fc7d995 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 茶葉さん» その長年と比べてまで褒めてくださり……ありがとうございます！適度に待ち時間というわくわくを提供しつつ、更新頑張ります…… (2019年12月16日 20時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 歌い手総推し！&外資系と書記長寄りの箱推し！さん» 明日と言わず、明後日明々後日も頑張っちゃってください( 'ω' )/ (2019年12月16日 20時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
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