百五十八通目 ページ9
「全員に通達！Aちゃんが逃げた！」
［［────っ！！！］］
逃げ延びて、人の目をかいくぐりながら裏庭にたどり着いた頃
通信機器から、怒りを交えたペ神様の声が響く
『……気づかれたか』
もちろん私のマイクはミュートにされており、この声が誰かに聞かれることはない
──私の微かな焦りが届くこともない
まさかこんなに早くバレるとは思っていなかった
一時間程の猶予はあると鑑みていたのだ
その間に心情を整えて、皆にしっかりと謝罪を送る
そうするつもりだったのだが
でもまぁきっと、少し前に逃げたとしか思われていないだろう
ここは既に、軍医室から遥かに離れた、一般兵の寄宿舎
近辺しか探さないと思われるから、安全は保証されるだろう
「ごめん。気づくのが遅くなった」
［──部屋を出たと見られるのはいつ頃だ」
「多分、夕刻。三十分ぐらい前だと思う。室温が下がりきってるし、刺してあった点滴の先が乾いてる。ベッドに人のぬくもりも残ってないし……窓から、渡り廊下の屋根上を通って、別棟に移ったんだと思う」
戦慄した
微かな状況証拠だけで、すべて当てられている
移動経路は愚か、時刻や行動の全てまで
彼の思考の中で把握されていた
即座に周囲のクリアリングを行う
──一般兵も、幹部もいない
耳に付いた機械に指を当て、彼らの発言を注意深く聞きながら、移動を試み走り出す
［──全員、探せ］
［［了解］］
主戦力を全員投下してきた
戦力の逐次投入は愚策、そうしっかりと理解しているらしい
私の目的地は、城門
現状一番安全な場所は、この城の外だった
しかし直接行くと、私がそこへ向かうことを予測するであろう面子に見つかってしまう
訓練場や食堂、動物小屋等を経路とし、門へ足をすすめることにする
──そう決めた直後、機械の奥で聞こえた破壊音のようなものに、思わず息を呑んだ
［Aちゃん、聞いてるんでしょ？］
ペ神様の声
憤りからか、声が震えていた
［……甘く見んなよ］
後に来る声は、地を這うように重く強い語調
彼の堪忍袋の緒が切れたようだった
──それでも私は、捕まるわけには行かない
自分はもう、変わってしまった
元に戻らなくてはならない
もしくは偽りの仮面でもなんでも付けて、それをひた隠さなくてはいけない
感情が薄れたなんて、きっとリイカが知ったら悲しむ
目を瞑ると想像されるのは、悲哀に瞳を染める彼女の姿だった
──どんな手段を使っても、逃げ延びてやる
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檸檬 - めちゃくちゃ面白いじゃないですか。返してください、私の腹筋（）。番外編で夜中なのに「ゲルテェェェェェェェ！（感涙）」って叫んじゃいました。 (2021年5月23日 1時) (
レス) id: 1448aeacc9 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 最近更新が多くて嬉しいです。ありがとうございます。これからも応援しております。 (2019年10月14日 1時) (レス) id: c595f3c6d5 (このIDを非表示/違反報告)
ホタテおいしぃ - 熱い展開になってきましたね！ (2019年10月5日 11時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
nia(プロフ) - 更新待ってました！！！ (2019年9月29日 21時) (レス) id: dcff59daa3 (このIDを非表示/違反報告)
るるりぃ - ココラさんと同じく何故か胸が苦しくて・・医務室から逃げる場面から涙が出ました。更新頑張ってくださいね！みたら士さん！ (2019年8月28日 23時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
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