百五十七通目 ページ8
職務を終わらせたしんぺい神は、施錠された軍医室の扉を開く
中に眠るAが起きたとき、逃げ出さないようにと閉められた鍵
点滴がそろそろ終わるだろうと、変えるためにここまで来た
──しかし、中に入った彼が見たのは、夜風になびくカーテン
開け放たれた扉からは冷たい空気が流れ込んで、室温は低くなっていた
彼女が眠っていたはずのベッドは整えられて、もう誰の影もない
点滴は外され、点滴掛けにか
けられていた
急いで耳に付いた通信機に手をかけ、幹部全員に通知を送る
──Aの通信機が卓上から無くなっているところから、彼女もこれを聞いているのだろう
それでも構わなかった
「全員に通達！Aちゃんが逃げた！」
［［────っ！！！］］
機械奥の皆が戦慄する
高感度に設定されたマイクは、尽くの音を拾ってた
それにより、皆の焦りが感じられる
「ごめん。気づくのが遅くなった」
［──部屋を出たと見られるのはいつ頃だ」
「多分、夕刻。三十分ぐらい前だと思う。室温が下がりきってるし、刺してあった点滴の先が乾いてる。ベッドに人のぬくもりも残ってないし……窓から、渡り廊下の屋根上を通って、別棟に移ったんだと思う」
ただの空いた部屋に見えるが、状況を把握するための証拠は大量に揃っている
そういう点──場を整えてから逃げなかったところは、Aの油断の権化だろう
しんぺい神は、捜索の手がかりとなるものが残っていることの安堵と
──自身を舐められているかのような現状に、憤りを抱えた
［──全員、探せ］
［［了解］］
その言葉を聞き流すと、しんぺい神は手に持っていたボールペンを握り折った
破片が彼の手に刺さり、微かに血が滲む
しかしそれに気を向けることなく、しんぺい神は声を発した
［Aちゃん、聞いてるんでしょ？］
何も答えない
まあ、そうだろう
答えれば──マイクをオンにすれば、周囲の音をすべて拾われる
自分の居場所を晒す愚行
［……甘く見んなよ］
吐きすてて、通信を切る
何度も彼女に言ってきた
無理をするな、頼れと
だからこそ、この形で返されるとは思っていなかった
自ら、遠くへ離れようとする
抱え込んで悩む
軍医であるのに、その仕事を全うできない
傷ついているのなら、体も心も癒やす
それが自身の職務
──絶対に、力任せにでも、彼女の支柱になってやる
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檸檬 - めちゃくちゃ面白いじゃないですか。返してください、私の腹筋（）。番外編で夜中なのに「ゲルテェェェェェェェ！（感涙）」って叫んじゃいました。 (2021年5月23日 1時) (
レス) id: 1448aeacc9 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 最近更新が多くて嬉しいです。ありがとうございます。これからも応援しております。 (2019年10月14日 1時) (レス) id: c595f3c6d5 (このIDを非表示/違反報告)
ホタテおいしぃ - 熱い展開になってきましたね！ (2019年10月5日 11時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
nia(プロフ) - 更新待ってました！！！ (2019年9月29日 21時) (レス) id: dcff59daa3 (このIDを非表示/違反報告)
るるりぃ - ココラさんと同じく何故か胸が苦しくて・・医務室から逃げる場面から涙が出ました。更新頑張ってくださいね！みたら士さん！ (2019年8月28日 23時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
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