百五十五通目 ページ6
しんぺい神の腕の中で崩折れたように眠るA
戸の残骸を踏みながら部屋に入ってきたグルッペンは、その様子を見ると悲しそうに目を伏せた
「……すまない」
総統という立場と幹部との差がある故に軽くだが、頭を下げるグルッペン
その姿を一瞥すると、しんぺい神は髪の下の顔に辛さで歪んだ笑みを浮かべた
「謝んないで、グルッペン。こっちこそごめん。憎まれ役頼んじゃって」
「いや、俺がやるべきだからな」
グルッペンによる、Aへの尋問
これは全てしんぺい神が彼へ頼み込んだものだった
軍医である彼は、常に兵たちに気を向けている
幹部であるメンバーにはなおのこと
重要職を担う彼らは、トントン然りなんでもかんでも無理をしやすい
皆は「軍医室でペ神と二人きりとかやばいやろwww」と言うが、その言葉を盾にして自分の怪我等を隠すこともある
──職を一つや二つ持つ彼らでもこうなのだ
最重要職に分類される三つをその小さな背に負うAのことに関して、さらに気を使っていた
体調的な面もだが、精神的な面が大きい
つい最近までは普通の高校生で、通常の生活を謳歌していた
それなのに、急に自分が住まう国を支える職につくことになってしまった
今まで手が届かない程遠くにいた幹部たち
自身もその輪の中に入ることになった
合うことすら叶わないという、我らが総統閣下
彼が歩く数歩後ろをついて歩くことになった
変化した環境に順応しようと、彼女は努力を重ねるだろう
──努力と無理は別物だ
彼女の様子から見て取れる
まだ、自分の持つ力に満足していないことを
現状の自身では、まだ戦術を練ることができない
──誰も死なない戦術を、練ることができない
彼女は女子高生だったから、命の尊さと重みを知っている
逆にそれが戦場に出る上で危険なのだ
戦場では人が死ぬ
一、二なんて少ないものではない
百、千単位で、敵軍も自軍も含め、命の灯火が消え果てる
それが、あの戦乱の中では普通なのだ
それをAは知らない
そして現在この国──彼女が通う高校には、人数は定かでないにしろ敵国のスパイが混ざっている
信じてきた仲間に、疑いを向けなければいけない
それが、気づいていないうちに彼女の心を蝕んでいた
──だから、強行するしかなかった
「……なんで、全部抱え込むんだよ」
珍しく毒を吐いたしんぺい神の声は、眠る彼女に届かない
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檸檬 - めちゃくちゃ面白いじゃないですか。返してください、私の腹筋（）。番外編で夜中なのに「ゲルテェェェェェェェ！（感涙）」って叫んじゃいました。 (2021年5月23日 1時) (
レス) id: 1448aeacc9 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 最近更新が多くて嬉しいです。ありがとうございます。これからも応援しております。 (2019年10月14日 1時) (レス) id: c595f3c6d5 (このIDを非表示/違反報告)
ホタテおいしぃ - 熱い展開になってきましたね！ (2019年10月5日 11時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
nia(プロフ) - 更新待ってました！！！ (2019年9月29日 21時) (レス) id: dcff59daa3 (このIDを非表示/違反報告)
るるりぃ - ココラさんと同じく何故か胸が苦しくて・・医務室から逃げる場面から涙が出ました。更新頑張ってくださいね！みたら士さん！ (2019年8月28日 23時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
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