百九十六通目 ページ47
「あなた、なんで……戦えば、こちらに多少なりとも損害を負わせられたのかもしれないのに」
連れられて行く足を止めたベリヌーイは、Aの声に反応するように二階席から見下ろした
「A殿。A・ヴィジィール殿」
Aの姓名を復唱する
意図のわからないその行動に、ただAは目を見開いているだけだった
しかしベリヌーイはふうとため息を吐くと、Aに向かってその頭を下げる
深く深く、最敬礼
「体育館裏の一件で貴方方が割りいってきたとき、確信しました。我々は何故、この国と争わなくてはいけないのかと」
「え……それ、だけ……で？」
「はい。ふと、考えてしまったのです。国政に関わりない……言う成れば国の末端とも言えるただの学校に、こんなにも正義感に溢れた人が居る国を、悪としてみることはできないのではと」
Aは再び驚愕した
それと共に、強い否定感に襲われる
「助けてくださったあなたに、私は敬意を払います。では」
──違う
あの時助けたのは、自分ではないだろう
リイカのほうだろう
そう、何度も叫んでやりたかった
知って知らずか発される、その感謝の言葉
言うべきは自分にではないと、言ってやりたかった
──しかしそれも叶わずで
兵に連れられた彼女は、もう振り返ることも──立ち止まることすらせず、Aの目の届かない扉の奥に、姿を消してしまった
伸びていた男共も、その後を追うように連れて行かれる
「A」
ふとロボロが、彼女の名を呼んだ
「その死体はあとから来る班が処理する」
言いながら彼は、Aの足音を指差した
思い出したように彼女もそこへ目を向ければ、床を血染めにする死体がそこにはあって
──そんな劣悪な状況にもかかわらず、ロボロの声音は酷く平坦だった
何を考えているかわからないそれに、Aはただ無心で頷く
「A、動ける？」
いつのまにかAに寄り添っていたシャオロンが、心配げに彼女の顔色を伺った
しかし当人は、力なく首を横に振って
「ちょっと疲れちゃったよ、シャオちゃん……お家に、帰りたい」
ベリヌーイという女のこと、人を殺したこと、友人等を騙していたと明かしたこと
様々なことが重なって、Aは気苦労を負っていた
「……そか。かえろ」
そういってシャオロンはAを俵担ぎにすると、その脚力で二階席まで跳んだのだった
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檸檬 - めちゃくちゃ面白いじゃないですか。返してください、私の腹筋（）。番外編で夜中なのに「ゲルテェェェェェェェ！（感涙）」って叫んじゃいました。 (2021年5月23日 1時) (
レス) id: 1448aeacc9 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 最近更新が多くて嬉しいです。ありがとうございます。これからも応援しております。 (2019年10月14日 1時) (レス) id: c595f3c6d5 (このIDを非表示/違反報告)
ホタテおいしぃ - 熱い展開になってきましたね！ (2019年10月5日 11時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
nia(プロフ) - 更新待ってました！！！ (2019年9月29日 21時) (レス) id: dcff59daa3 (このIDを非表示/違反報告)
るるりぃ - ココラさんと同じく何故か胸が苦しくて・・医務室から逃げる場面から涙が出ました。更新頑張ってくださいね！みたら士さん！ (2019年8月28日 23時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
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