百九十二通目 ページ43
観衆の目に気づかれないよう、Aは震えていた
こんな現象、見たことがないからだ
自身が人殺しを犯した事実よりも、その衝撃は強かった
紅く染まった、シャオロンの双眸
──Aはその色に、既視感を覚えた
グルッペンの瞳と、同じ
飲み込まれてしまいそうな赤
──恐怖を植え付ける、その色
思考してもわからない
どんな文献にも、そんな事項が乗っていた覚えがなかったのだ
本の記録を、ただただ思い出す
そんな時
「ッッッッ、任務を完遂じろぉぉぉ！」
Aが戦闘不能に落した女が咆哮する
その声を皮切りに、数人のうち三人がフロアへ降り立つ
ハッとして、Aはホルスターに戻した銃を抜こうとした──しかし
「ッ」
まだ手に残る死の感触と、腕の痛みでそれを落とす
このままでは、シャオロンが──
彼に走り寄る無数の敵を目で追いながら、Aは焦りを覚えた──が
「邪魔」
先行してシャオロンに駆け寄った影
──彼が横にシャベルを薙ぐと同時に、その姿は横へ引かれるように吹き飛んだ
壁に当たったその人物は「カハッ」という消え入るような嗚咽と共に崩れ落ちると、意識を失ったように身体の力を抜いた
「おいおいおいおいどうしたぁ？！もっと来いよぉ！」
挑発するように手招くシャオロン
その後ろ姿を見ながら、Aは絶句していた
「ッくそっ」
男がまた一人、彼に駆け寄る
片手剣を強く握ると、シャオロンの腹部あたりを狙うように奮った
手練なのだろう、その剣さばきは目線が追いつかないほどはやく、Aはシャオロンの負傷を確信した
──しかし、その後姿は、超常的なまでに上方へ飛んだのだった
単純な跳躍だが、足の筋が強い故の飛躍力
男の顔面ほどの高さ──およそ160cm程飛び上がると、その状態から蹴りを繰り出す
「ッグ……ハァッ」
男の顔面にクリーンヒットしたその足は、えぐる様にその頬を蹴り飛ばした
凄まじい破壊力でいなされた男は、フロア上に取り残された敵一人の足元に、路傍の石のように転がる
その無様な様を、観衆は驚愕したように──恐怖したように、見るのだった
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檸檬 - めちゃくちゃ面白いじゃないですか。返してください、私の腹筋（）。番外編で夜中なのに「ゲルテェェェェェェェ！（感涙）」って叫んじゃいました。 (2021年5月23日 1時) (
レス) id: 1448aeacc9 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 最近更新が多くて嬉しいです。ありがとうございます。これからも応援しております。 (2019年10月14日 1時) (レス) id: c595f3c6d5 (このIDを非表示/違反報告)
ホタテおいしぃ - 熱い展開になってきましたね！ (2019年10月5日 11時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
nia(プロフ) - 更新待ってました！！！ (2019年9月29日 21時) (レス) id: dcff59daa3 (このIDを非表示/違反報告)
るるりぃ - ココラさんと同じく何故か胸が苦しくて・・医務室から逃げる場面から涙が出ました。更新頑張ってくださいね！みたら士さん！ (2019年8月28日 23時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
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