百八十七通目 ページ38
「お前らはもう人質だ。外に出しもしねぇし中に入れさせもしねぇ。生き残りたけりゃ、自分のお国の総統が死ぬのをまってろ」
自身の独壇場になったがはやいか、その男は我が物顔でそう言った
遠目から見ただけなので確実とは言い難いが、あの男が身につけている作業着の腰部に、短刀が帯刀されているように思われる
私が隠し持つナイフでの接近戦は危険だ
肘から指先程の長さをしたあの短刀と私のナイフでは、あちらのリーチのほうが長いために先手を取られてしまう
やはりこの距離から確実に、相手を仕留める他ない
──しかし、まだ伏兵がいるかもしれないのだ
故に、私に与えられたチャンスは一回のみ
しかも、立ち上がって即射撃の、照準を合わせる時間なしの一発
でなければ、潜んでいる別の人間に私の頭を穿たれる
どうすればよいのだろうか
「ったく……こんな退屈な仕事、お上も俺にやらせんじゃねぇよ」
吐き捨てた男の言葉が、強く耳に残る
退屈な仕事
たしかにそのとおりかもしれない
だって、結果は火を見るより明らかなのだから
【国の長の命と国民たった数百人の命、同じ天秤に載せることすらおこがましい】
それはつまり、この取引の無意味さを表す
男がやることは、交渉決裂後、全員の惨殺のみ
──抵抗力の弱い人間の、なぶり殺し
だから、退屈な仕事なのだろう
──確か元手国の名前は、ガヴィルと言っただろうか
強くもない弱くもない、しかし治安は悪く、国の首領が生きがっているだけの国
戦争ならば──確実に、我々が勝っていた
しかしこのように内部破壊をされては、面倒くさいがすぎる
──どうにかしなくては
そう、思っていたときのこと
「人の土地で何勝手やってくれとるん？おまえ。死ねよ」
いつのまにか下層のフロアにあった、もう一つの影
見慣れたオーバーオールと、赤いニット帽
愛用のシャベルを肩に担いだその姿
「……おもしろこと、あんじゃねぇかよ」
「は？知らんわ。さっさといねや」
我々国の矛が、その武器を振りかざした
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檸檬 - めちゃくちゃ面白いじゃないですか。返してください、私の腹筋（）。番外編で夜中なのに「ゲルテェェェェェェェ！（感涙）」って叫んじゃいました。 (2021年5月23日 1時) (
レス) id: 1448aeacc9 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 最近更新が多くて嬉しいです。ありがとうございます。これからも応援しております。 (2019年10月14日 1時) (レス) id: c595f3c6d5 (このIDを非表示/違反報告)
ホタテおいしぃ - 熱い展開になってきましたね！ (2019年10月5日 11時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
nia(プロフ) - 更新待ってました！！！ (2019年9月29日 21時) (レス) id: dcff59daa3 (このIDを非表示/違反報告)
るるりぃ - ココラさんと同じく何故か胸が苦しくて・・医務室から逃げる場面から涙が出ました。更新頑張ってくださいね！みたら士さん！ (2019年8月28日 23時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
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