百七十六通目 ページ27
「はぁ……はぁ……ッ……はぁ」
乱れた呼吸を整えつつ進むが、その足が停止することはない
出血により視界や意識が眩む
しかしそれも、歩みをやめる理由にはならなかった
ふらつく足元に目を向ければ、ポタポタと垂れ続けた鮮血が道をなしている
掃除が大変そうだなんて思った
どうやって逃げようか、どこへ逃げようか
逃走経路、その後の隠れ場所、期限等
重要な考えの中に場違いな思考が紛れ始めたのも、この怪我故なのだろうか
とりあえずは、このまままっすぐ進もう
そして裏口を使って、壁の外に出て城下に身を隠すんだ
もともとはそこまでするつもりはなかったが、今やそれ以外の方法がない
城下町に居座ってしまえば、一国の幹部たる皆がわざわざ追ってくるのも難しくなる
その点、同じ幹部だが存在を隠匿されている私は有利だ
容姿等だけみればただの高校生に過ぎないし
名前も見た目も知られていないのだから、自由に行動ができる
この面倒くさい私の詳細が、すごく便利なものに早変わりするだろう
そうと決まれば決行しよう
──なんて、思っていたのだけれども
「───ッ！！」
Aの視界、広い廊下の奥に見えたのは、裏口に行くための曲がり角
左右にわかれたそこの岐路に、緑色の影が立っていた
遠目に見ても、獲物を探すようにギラつく双眸
ゾムである
すぐさまAは、急旋回をした
向かうのは、上階層へと続く階段
弱った思考力でも、瞬間に察したのだ
【あの男に加減はない。目をつけられたら最後、丁寧に急所を切り取られる】と
戦闘浴に塗れた目を見ればわかる
殺しを欲する男が、わざわざチャンスを逃すわけない
生かすわけがない、今までの幹部のように甘くはいかない
決定的に思わせるものが、ゾムという人間にはあるのだった
経路を変えて、階段を登る
──いっそのこと、下がだめならば上に逃げてしまおう
そう、Aは決意した
──散々逃げようと思っていた医務官が、その最上階にいることも忘れて
掠れた意識は、俊敏な思考力さえも蝕むようだった
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檸檬 - めちゃくちゃ面白いじゃないですか。返してください、私の腹筋（）。番外編で夜中なのに「ゲルテェェェェェェェ！（感涙）」って叫んじゃいました。 (2021年5月23日 1時) (
レス) id: 1448aeacc9 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 最近更新が多くて嬉しいです。ありがとうございます。これからも応援しております。 (2019年10月14日 1時) (レス) id: c595f3c6d5 (このIDを非表示/違反報告)
ホタテおいしぃ - 熱い展開になってきましたね！ (2019年10月5日 11時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
nia(プロフ) - 更新待ってました！！！ (2019年9月29日 21時) (レス) id: dcff59daa3 (このIDを非表示/違反報告)
るるりぃ - ココラさんと同じく何故か胸が苦しくて・・医務室から逃げる場面から涙が出ました。更新頑張ってくださいね！みたら士さん！ (2019年8月28日 23時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
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