無自覚ヤンヘラ製造機

プロローグ代わりの回想【何を思い何を願うのか】 ページ2

ドサッ

薄暗く人通りも全く無い路地裏に、そんな音が響いた。
無数に積まれたゴミ袋の上に投げ出された「ソレ」は女だった。
不穏な空気にそぐわない、今にも壊れそうな体躯の女。

「ゴミ･･･はゴミ箱に捨てなくちゃ･･･へへへ、ひひ･･･ひ」

女をゴミの山に放り投げた男は目が据わっておらず、肌には赤黒い斑点がいくつかあった。
薬 物中毒者の特徴である。
男はまるで酔っているかの様な千鳥足で笑いながらその場を去った。

数秒経ち、捨てられた女の指がピクリと動く。

『(何飲まされた･･･LSDじゃない･･･ハーブか？)』

言葉を発する必要は無いと思った女は自分が置かれた現状の思考を広げる。

『(つうか過剰摂取(オーバードーズ)？死ぬんじゃね？うわ〜マジか)』



───意思を問おう。



死ぬのではないかという思考に至った割には焦燥感の無い思考をしていると、どこからがそんな声が聞こえてくると同時に羽が数本、ヒラヒラと舞い落ちてきた。

『どこから･･･もしかして神様的なやつ？だったら助けて欲しいんだけど。元気が出る薬とか持ってない？』



───私は神ではないし私は君を救わない。



───君が全てを救うのだ、未来仏弥勒よ。



バサッバサッと女の頭上を羽ばたいているものが彼女の視界に入る。

『･･･鳩が喋ってる。この薬キマリすぎでしょ』

あはぁ、と生気のない乾いた女の笑い声が路地裏に響いた。

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