過去番外 ファンレター1 ページ32
準主役で望んだ初舞台。
最後まで大成功で終わった事で、劇団の寮内は打ち上げだのなんだのと最高の盛り上がりを見せる。
監督から裏方まで、全員の笑顔が溢れる賑やかな空間。
その中で、ただ一人。
「……」
ただ一人、俺だけは浮かない顔をしていた。
もちろん、舞台が成功した事に関しては嬉しい。
十六歳、未経験者で初の準主役という大役も、特に目立ったミスなく最後までやり切れて。
悔いだって、それこそ一つもない筈なのに。
「……」
どうしてか、喜びきれない自分がいた。
元々条件付きだったからなのかもしれない。
皆が褒めてくれて、監督からも高評価を貰えて。
嬉しくない訳がないのに、それでも。
───俺、舞台続けるよ。
その一言が、どうしても出なかった。
****
打ち上げも中盤にさしかかり、寮内は一層の盛り上がりと騒がしさを見せる。
「やってるか?」
その一方で煮え切らない気持ちを抱えていると、いつの間にか隣に来ていたらしい監督に話しかけられた。
「まぁまぁ」
心にもない返事をして、目の前で騒ぐ団員達を眺める。
「混ざって来いよ」なんて言われて、首を振る気にもならない。
黙ったまま、一人にしろと言わんばかりに前を見つめる。
だが困った事に、監督としてもそこで引く気は無いらしい。
「A、見てみろ」
視界を遮るように腕を差し出され、見ろと言わんばかりのその視線。
こうなると最後まで従うしかない。キレられるよりはまだマシか。
ため息を吐きながら、その手に下げられた紙袋を覗き込む。
「! これ……」
そこにあったのは、大量の手紙だった。
色や形が違えば、大きさや厚みも様々で。
監督が言うには、これは初日から千秋楽にかけて集まった分で、明日以降はもっと増えるらしい。
(やっぱこの劇団人気なんだな……)
そう他人事のように思っていると、監督に意外そうな顔をされる。
「……驚かないのか?」
「別に」
あれだけの客がいるんだから、手紙だってそのぐらい来るだろ。
実際この劇団は最高だ、なんて感想を見た所で俺には特に思う事も無い。
今回仕方なく出ただけだし。
そう内心で皮肉を零していると、何を思ったのか突然笑い始めた監督。
笑う所じゃねぇよと思いつつ横目に見れば、「言い方が悪かったな」と何故か謝られた。
「これ全部お前宛てだ」
「は……」
予想外の答えに、思わず言葉が詰まる。
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ノルン(プロフ) - 更新お疲れ様です!待ってました!!今回も物凄く面白いです!(語彙力)三角の行動に心臓がキュッて締め付けられました 次の更新も楽しみにしてます! (2019年1月26日 17時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - 杏仁豆腐さん» コメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまい申し訳ありません。不在中に二度も待機コメントして下さって感謝以外の言葉も出ません・゚・(つД`)・゚ 本当にありがとうございます!! (2019年1月25日 20時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - うわぁぁぁ!!続きがメッチャクチャ気になりますぅぅぅ!! 次の更新待ってます!! (2019年1月25日 11時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - ラッキーさん» 今更ながらですみません。コメントありがとうございます!たまに自分の稚拙な文章力に落ち込んでたりするので、そう言って頂けるのはすごく嬉しくてやる気になります.....!また再開して行くつもりですので、今後もよろしくお願いします(´▽`) (2019年1月24日 16時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - 支杞さん» コメントありがとうございます!大っっ変長らくお待たせしておりました。今更ではありますが何とか完結目指して頑張りますので暇つぶし程度に読んでいって下さいませ(´▽`) (2019年1月23日 19時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:祐 | 作成日時:2018年8月14日 14時