カレー(いづみ) ページ20
いづみside
『監督さん?』
「は、はい!」
電話越しに聞こえるAくんの声に、私は緊張でベッドの上に正座する。
「久しぶりAくん!元気してた!?」
何とか思いついた台詞を絞り出すと、Aくんは少し笑いながら、普段と変わらない様子で『元気です』って返してくれた。
私の方も元気か聞かれて、実際に頷きながら首を何度も縦に振る。
(どうしよう……!)
私って普段Aくんとどんな話してたっけ!?
それに久しぶりとか元気とか、ついこの前電話で聞いたばかりなのに……!
『何かありました?』
「ううん!そうじゃないんだけど……」
頭が真っ白になって、何を話そうとしてたかも思い出せない。
(そもそも私、Aくん以前に男の人と電話ってあんまりした事ないよ……!)
劇団の皆とも偶にするけど、それでも夕飯の材料とか遅くなるとかの連絡だけだし、Aくんとはそもそも電話すらした事ないし……。
『監督さん』
どうしようか焦ってると、Aくんの方から話しかけられる。
「ひゃい!」
慌てて返事をすれば、また笑われて。
『そんな大した事じゃないんですけど……そっちの夕飯て、監督さんのカレーですか?』
「え……」
かなり予想の斜め上な質問に、私はぽかんと口を開けたままその場に数秒固まる。
まさかここに来て、いきなりAくんの口から「カレー」の単語が出るなんて。
確かにここ数日は私がAくんの代わりで(支配人は皆に反対されて)カレーを作ってるけど……。
「そうだけど……どうして?」
訳が分からないままに聞くと、少し遅れて照れた声が返ってくる。
『いや……声聞いてたらなんか、無性に監督さんの作ったカレー食べたいなって思って』
やっぱりカレーと言えば監督さんですし。
言いながら、ガサゴソと何かの音を立てるAくん。
それは緊張していた私からすれば、気の抜ける位Aくんらしい内容で。
「ぷっ……あはは、何それ!」
気がついた時には、自然と笑顔が零れていた。
『冗談抜きで美味しいですから。監督さんのカレー』
「他とはスパイスが違うからね!」
『うわ食べた……』
それから数回のやり取りをする内に、ずっとうるさかった心臓も少しずつ落ち着いていって。
「帰ってきたらまた作るよ」
『お願いします!……あ、でもそれだと幸辺りがうるさいか……』
「あ、そうそう!その事なんだけどーーー」
話すつもりだった合宿の事も、流れのままにちゃんと説明出来た。
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ノルン(プロフ) - 更新お疲れ様です!待ってました!!今回も物凄く面白いです!(語彙力)三角の行動に心臓がキュッて締め付けられました 次の更新も楽しみにしてます! (2019年1月26日 17時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - 杏仁豆腐さん» コメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまい申し訳ありません。不在中に二度も待機コメントして下さって感謝以外の言葉も出ません・゚・(つД`)・゚ 本当にありがとうございます!! (2019年1月25日 20時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - うわぁぁぁ!!続きがメッチャクチャ気になりますぅぅぅ!! 次の更新待ってます!! (2019年1月25日 11時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - ラッキーさん» 今更ながらですみません。コメントありがとうございます!たまに自分の稚拙な文章力に落ち込んでたりするので、そう言って頂けるのはすごく嬉しくてやる気になります.....!また再開して行くつもりですので、今後もよろしくお願いします(´▽`) (2019年1月24日 16時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - 支杞さん» コメントありがとうございます!大っっ変長らくお待たせしておりました。今更ではありますが何とか完結目指して頑張りますので暇つぶし程度に読んでいって下さいませ(´▽`) (2019年1月23日 19時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:祐 | 作成日時:2018年8月14日 14時