【A3!】舞台から落ちたら演劇の世界にいました５

見守り役(いづみ) ページ2

至side

写真をAに送り、その後も美味そうに米を頬張る綴。

その姿を見ながら、俺も皆と同じ様に米にかぶりついた。
胡座をかく足の上に相棒(ゲーム機)を乗せ、おにぎりを咀嚼しながら画面をタップする。米うま。

｢……｣

思い出すのは昨日の夜。

『明日から綴に夜食作ってやってくれません？』

俺の部屋に入ってきたかと思えば、突然Aにそんな事を言われて。

『なんで俺だよ』

瞬時に嫌な顔をしたのは記憶にまだ新しい。

ゲーム画面を見ながら言ったら、後ろから｢やっぱりか｣って声が聞こえて。
分かってるなら聞くなよ。

『大体、俺誰かに料理振る舞った事なんて過去一度もないし』

お前とここ来てからは尚更その必要も無いし。

言いながら少しだけ後ろに気を配ると、手を合わせる小さな音がした。

どうやら、まだまだ折れる気はないらしい。

『そこをなんとか！』

『ムリ。咲也とかいるじゃん』

『お願いしますね！九時頃でいいんで！』

『おい』

お前俺の話聞いてた？
強引なんてもんじゃない切り返しに、俺は驚いてAの方を振り向く。

すると、あいつは何故か口元を隠してて。
見た感じ笑ってるように思えた。

『なに』

ジト目で睨むと、すいませんと謝られる。

『とか言って、結局明日になったら作ってくれんだろうなって』

至さん優しいから。

そう言って笑うAに、俺は訳が分からず困惑して。

『……は？』

眉を寄せながらに呟けば、あいつはそれだけだからと俺に背を向けた。
そしてドアノブに手をかけた所で、顔だけを俺の方に向ける。

『それじゃ俺もう寝るんで』

『いや、ま、』

『頼みましたよ』

そのまま扉は閉められて、再び静寂が訪れた俺の城……って、何この謎展開。

しかも次の日の朝には普通にあいつ寮出てていったし。

(……そんで結局夜食作るという)

我ながらまんまと乗せられてやんの。
日に日に俺の扱い方上手くなってんのがまた腹立つわー。

しかもいざ作りに談話室行ったら咲也とシトロンに待ち伏せされてたし。
案の定Aに頼まれてって、何それ準備万端すぎて怖。

｢至さん？どうかしました？｣

ぼうっとしてたからか、咲也に声をかけられる。

｢……んーん｣

すぐになんでもないって首を振った。

｢綴、美味い？｣

｢え？美味いっすけど……｣

｢そ。そりゃよかった｣

……まぁ実際、たまにはいいなとか思ったり。
使われた事に関しては癪だけど。

(……仕方ない)

脚本が出来るまでは作ってやるか。

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