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side うらた
使い慣れた道を通り、部屋に入る。そしてそのまま、連れてきたAを椅子に拘束した。坂田が拘束は要らないと駄々をこねていたが、多数決で拘束することにした。
「こいつ、どうすんの?」
「人質としての価値も無いし、整理つけるって意味で殺すのが妥当じゃないですか」
「それはあかん!」
「なんで」
「さっき言うたやん!せっかく助けたのに殺したら意味ないやん」
「じゃあどうすんの?仲間として手元に置く?俺らを殺そうとした相手を?」
「っそれは…」
「うらたさん、どうする?」
「えっ?」
ぼーっとしていて聞いていなかった。坂田とセンラがいつものように言い合いしているな、くらいで。志麻くんの呆れた顔が目に入った。
「え、じゃないでもう…こいつの処分、どうすんの?」
「あ、あぁ…その話か。こいつは…」
チラリ、とAを見て目をそらす。
俺は、こいつをどうするべきだろうか。助けたがっている坂田には悪いが、組織のためには殺すべきだ。こいつはうちの事情も知りすぎている。
『うらた』
凛とした声が響く。振り返ればAが真っ直ぐこちらを見つめていた。
『好きなようにしなよ』
「っ…」
(お前はいつも、そう言ってたっけ)
───────
「どうすっかなー…」
『何してるの?』
「今度の仕事なんだけどさ。受けるべきか迷ってんだよね。ここの会社、いい話聞かないからなー」
『あー…警備側の被害が尋常じゃないって話聞いた事あるね』
「そそ。それがどうやら雇い主のせいっぽいんだよな。さすがにお前らを危険に晒したくねぇし、断るべきかな」
『けど、今月厳しいんでしょ?』
「そう、だから悩んでる。報酬が無駄にいいんだよなぁ」
『ふっ』
「何笑ってんだよ。俺は真剣に…」
『分かってるよ。みんなの心配ならしなくて大丈夫。みんな強いんだから。でしょ?』
「それはもちろんそうだけど…」
『何かあるって分かってるなら、それなりの策は打てるよ。けど、無理に受ける必要もない。お金が厳しいならみんなでバイトでもしようよ。みんなとなら、楽しそうだと思わない?』
「それいいな」
『でしょ?とにかく、うらたが決めたことなら誰も文句言わないから。好きなようにしなよ、ね?』
───────
「A…本当にいいの?」
『何が?』
「俺でいいのかなって」
『ふっ。そんなに自信ない?』
「それはお前がっ」
『ちゃんとうらたのこと好きだよ。だから、何も気にしないで。好きなようにしなよ』
───────
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