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『…んっ!?』

目を開ければすぐ目の前にセンラの顔があって驚いた。それと同時に頬を手のひらで包まれ、唇が触れた。

「ほんま、かいらしいな」
『おりは、んっ…』

言葉を遮るようにキスをされる。だんだんと深くなるそれについていくのがやっとだった。

『待っ…ん…おり、はらく…んむっ…』
「…はぁ。Aの口の中熱いな」
『っ…ゴホッゴホッ…あ、当たり前じゃん!変なこと、言わないでよ!』

思わずセンラを叩くが、その腕は簡単に掴まれてしまった。

「全然痛ないよ。力入ってないもん。まだ辛いやろ?」
『…折原くんのせいじゃんか…』
「えー、俺のせいなん?ていうか、また戻ってるやん」
『…?何が?』
「名前」
『!…もう呼ばない』
「なんで?俺は呼ばれたい」
『だ、だって…緊張する、し…呼びにくい』

1回言うだけでもいっぱいいっぱいなのに、そう簡単に何度も呼べるわけがない。呼ばれたいと言われても困ってしまう。

「馴れの問題やろ?ずっと呼んでたら大丈夫やって。ほら、呼んでみ?」
『え…やだ』
「誕生日やねんから、これくらい聞いてくれるやろ?」
『…なんかむかつく』
「で?呼んでくれるん?」
『…せ……ん………』

目の前のセンラは子犬のようにあからさまに嬉しそうで、尻尾があれば大きく振っているだろう。

『…帰った方がいいんじゃないかな、折原くん!』

明らかに期待をしている彼を見れば余計に言いづらくなってしまって、恥ずかしさを隠すように早く帰れと急かし始めた。

「えぇー。そこまで来て戻んの?まあ、確かにもう帰らなあかんけど…」

センラはさっと帰り支度を済ませると、Aの頭をそっと撫でた。

「悪化させたら悪いし、もう帰るな。ちゃんと寝るんやで?」
『…もう遅いよ…それに、どっかのアホじゃないから、それくらい分かってる』
「ん?それ誰のこと言うてるん?」
『さぁ?』
「…俺のことじゃないと信じてる。明日休むようならまた来るな」

そう言って部屋を出ようとするセンラを、待って、と引き止めた。

『…あのさ、折原くん』
「ん?」
『もう少し…だけ、待ってて』
「何を?」
『な、まえ…呼ぶの…』
「!…もちろん」

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作者名:沖瀬アオ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年9月11日 19時

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