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「…はぁ…我慢出来らん。今日まだ食べてないねん。ちょーだい」
『え、まっ』
「いただきます」
ガリッ
制止の声も聞かず、坂田の牙が皮膚へと食い込む。ピリ、とした痛みが走った。
『んっ…さか、』
「ん…」
私を抱きしめる坂田の腕を掴む。だが、ピクリとも動かない。ゴクリ、ゴクリと喉が鳴る音が鮮明に聞こえる。思わず、自分の喉も鳴ってしまった。
「あは。Aも飲みたくなっちゃったん?いいよ、僕の飲んでも」
『い、いら、ない』
「そう?じゃあ後で欲しくなったら言うんやで」
『いや、私は』
「僕の気持ち聞いといて、僕以外の血飲むなんて言わへんやんな?」
『え』
「許さへんよ。そんなん。血も心も身体もぜーんぶ僕の虜になってよ。僕なしで生きれんくなって。僕と一緒に永遠を生きてよ。A」
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拝啓 志麻へ
坂田がこんなに重いとか聞いてない
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「えぇ?逆に数百年付き合いあってなんで知らんの。とっくに気づいてると思ってたで」
『い、いや、私の前ではあんなとこ出したことないよ…!志麻は知ってたわけ?』
「当たり前やろ。あいつの異常な執着なんか、生まれた時からやもん。うらたさんもセンラも気づいとるよ。分かりやすいやん」
『うそ…私本当にびっくりしたのに…』
「…坂田を望んだこと、後悔した?」
『…』
「…Aが本気で坂田が嫌なんやったら、坂田の元から逃げる手助けも、主従関係の解除もしたるよ」
「A、なんのお話してんの?」
突如後ろに現れた気配と声。ビクリと身体が跳ね上がった。ゆっくりと振り返ると、そこには表情の見えない坂田がいた。
『っさか、た』
「坂田」
それに志麻は驚きもせず坂田の名を呼ぶ。私の隣までやってくると、そこでようやく志麻を視界に入れたのか、ニコリと笑った。
「まーしぃおはよ」
「おはよーさん。最近のカフェ事情話しとっただけやで。坂田はこんな時間にどうしたん?」
「仕事終わったからA探してた。返してくれる?」
「ん。話し終わったからいいよ」
「ありがと!行くよ、A」
『うん』
坂田が部屋を出ようとするのについて行こうと立ち上がる。そこで思い出したように声をかけた。
『あ、志麻』
「なん?」
『さっきの、いらない』
「…いいん?どうなっても知らんよ」
『今更坂田のいない場所で生きるのも寂しいし、何より私のご主人様はそれを望まないから。それに、私の全部捧げるって言葉に偽りはないもの』
「そう。せいぜい気張りや」
志麻「身代わり」→←あほの坂田。「吸血衝動ver.ヤンデレ」
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