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「坂田?」
「…」
「ぼけっとしてたら置いてくで〜」
いつものようにぼーっとして置いてかれかけている坂田に呼びかける。
あれから10年とちょっと。俺たちは友達から、仲間へと昇格した。もはや家族に近いかもしれないほど。
坂田を見る度に思い出す。君との思い出と、君の最後の願い。
『坂田のこと、お願いしてもいい…?』
嫌ならそれでいいと言いたげだった。それでも構わないといった表情だった。最後の君の言葉が、それだなんて苦しい気持ちもあった。けれど、俺はそれを引き受けた。
だからといって、今も君のために一緒にいるわけではない。あれは、1つのきっかけにすぎない。
「…僕がお前を置いてくねん。舐めてんなよ!」
「はぁ!?待っといてやったのになんやねんそれ!」
「べー、っだ!」
「待てコラ坂田ァ!!!」
煽って逃げていく坂田を追いかける。うらたんと志麻くんの、笑い声と呆れた声が聞こえて、笑みを浮かべた。
君に出会えてよかった。君に坂田を託されてよかった。おかげで最高の仲間に出会えた。
あの時抱えきれなくてごめん。俺の世界を変えてくれた君を救えなくてごめん。
それから、君が大切にしていた幼馴染みの隣を奪ってごめん。
気づいてたよ。君が1番欲しかったもの。そして、君が悲しくも諦めたもの。合ってるやろ?
まあ、なんて言われたとしても渡さへんのやけど。いや、別にいらんな?あげるわ。
なーんてな。
俺の世界を変えてくれてありがとう。俺の世界に彩りを与えてくれてありがとう。君との思い出。出会いから別れまで、別れたあとの君が繋げてくれたものまで全部。君の打算があったみたいやけど、それには目をつぶって。大切に、大切に抱えて、けれどそれを重荷にはせずに、全力で生きていくよ。
これからも君に出会えてよかったと思えるように。これからも、世界が輝いて見えるように。
これからも、君が大好きでいられるように。
愛してる。A。
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