零時の鐘が鳴る頃に

54 ページ8

｢ほら、教えてほしがってたこと教えてあげますし｣

私が断らないと確信しているような…いや、断らせないといったような笑み。

(まぁ、気になってるしいいかな…一緒に食べたくはないけど)


『…分かりました。個室、行きましょう』

しぶしぶ了承して、今日は空いてる部屋あったかなと頭の中で思い出しながら、歩き出す。

そのせいで気づかなかった。

｢あ！｣

ぎゅっ

『ぐへっ…！？』

この勢いのまま突進してくるやつに。


｢A！今からお昼？お昼やんな！僕と話そ？弁当あるからさ！｣

『さか、たさん…』

(めちゃくちゃ痛いんですけど潰れる。力加減知らないのかこの人…)

そういえば朝もこんな感じだったな…と考えて頭が痛くなった。きっと坂田さんはそういう人だ。

(というか、弁当屋って坂田さんだったの…？どうりでいつもの人の標準語じゃなかったわけだ…ほんとこの人たち何してるの…)

ほんとわざわざ会社に入ったり、弁当屋したり、する必要あるのだろうか。記憶を変えられるなら仕事をする必要だってないはずだ。ここに侵入することも容易だろう。

なのになぜ…もしかしてバカなの？

55→←53

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す