63 ページ17
『…?』
「お前のその顔もっと食べたなる」
『っ…!?』
「怖がってたと思ったら気許して、強気で、笑顔まで見せて、やのに俺が1回食べただけのことがずーっとお前の心を支配してるんやろ?ちょっとのことで思い出して震えて、一瞬で表情が変わる。こんなかわいいもんないやろ」
『や、め…』
足が震えて動けない。1歩下がることすらできない。
「…泣くなや」
いつの間に零れていたのか、頬を伝っていた涙を親指で拭われる。そして頭にもう片方の手を置いた。
「今は食わへんから安心せぇ。早く泣き止まな遅れるで」
そう言って彼は微笑んで、先に歩いていってしまった。
(誰の、せいだと)
あなたのせいで震えて怖い思いして痛いのに、あなたが元凶なのに、なんて無責任なひどいやつ。やめてくれればこんな思いしないのに。
そう、思っているのにそれがどこか懐かしいだなんて馬鹿げている。冷たい手を温かいと思うなんて絶対におかしい。
(どうして、こんなにも)
志麻さんが歩いていった方向に目をやる。すれば、彼は足を止めて振り返って
「はよ行かんでええんか〜?課長に怒られても知らんからな〜」
なんて間延びした大きめな声で言う。
(今すぐその背中に抱きつきたい、なんて思うの)
意味が分からない。自分の心なのに、どうしてまるで別の誰かの心のような、誰かの感情のような感じがするのだろう。この人といると、私は私でなくなっていく気がする。
550人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
沖瀬アオ(プロフ) - 奏馬さん» ありがとうございます…!!そう言ってもらえて嬉しいです(´;ω;`)頑張ります! (2019年1月17日 15時) (レス) id: 6a612532f8 (このIDを非表示/違反報告)
奏馬(プロフ) - サラリーマンの志麻セン好みです!このお話楽しみにしてます!がんばってください! (2019年1月16日 22時) (レス) id: faa531ce8c (このIDを非表示/違反報告)
沖瀬アオ(プロフ) - 熊野 心音/そらなー@ちくわ同盟さん» わぁぁありがとうございます(´;ω;`)その言葉だけで頑張れます…!頑張って更新します♪ (2019年1月15日 16時) (レス) id: 6a612532f8 (このIDを非表示/違反報告)
熊野 心音/そらなー@ちくわ同盟 - このお話すごい面白くていつも楽しみにしてます!更新、頑張ってくださいね!! (2019年1月14日 2時) (レス) id: 7a918a5fac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ