107 ページ7
.
.
「……………で、なにあったん」
わたしに、自分のセーターを着せてくれた渋谷くんが聞いてくる。
「言うのいらんかったら無理に聞かんけど……」
ごにょ、と口ごもる渋谷くん。
相変わらず不器用な優しさ。
「………………言ったら、たぶん渋谷くん怒るもん」
「は？ 怒らへんて」
「怒るよ。たぶん、自分に怒ると思う、渋谷くん」
何を言ってるのか、という表情をしていた渋谷くの顔が、みるみるうちに険しくなっていく。
「………………………………まさか朝の女か？」
「………………………」
わたしが黙っていると、くそ、と怖い声で呟いた。
「くそ、……………やからさっきあんなネガティブなこと聞いてきたんか」
わたしじゃ隣にいたあかん？ と聞いたときのことらしい。
谷口さんたちに腹が立っていたのは本当だけれど、心の隅で、谷口さんの言葉がずっと引っかかっていた。
わたしは、渋谷くんの隣にいることが許される人間なのかなって。
「俺のせいや、ごめん」
渋谷くんの声が震えてる。
「や、渋谷くんのせいちゃうよ………………怒らせたのわたしやし」
「は？」
「渋谷くんと別れろブスって言われたから、黙れ性格ブスって言っちゃったし」
目をぱちくりと瞬かせた渋谷くんが、「…………女ってこわ」と呟く。
「別れろ、って言われたん？」
「うん。わたしじゃ渋谷くんに釣り合ってないって」
渋谷くんの眉間の皺が深まる。
なんやねんそれ、と怒気を含んだ声で言い放つ。
「やから、ちょっとネガティブになっててんけど…………でも、周りになんて言われても、渋谷くんがわたしを好きって言ってくれるならそれでいいし、渋谷くんだけを信じる」
口元に微笑を載せると、渋谷くんはわたしの髪を優しく撫でて、
「…………俺はおまえ、…………Aだけが好きやし、Aじゃないとあかんやん」
そう呟いた。
もうお腹いっぱいだよ、渋谷くん。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 372人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
uu(プロフ) - みさこさん» みさこ さま、いつもコメントありがとうございます！ 自分でも自分の更新頻度に笑ってます。わたしなりにぼちぼち進めてまいりますので、お付き合い願えますと幸いです。 (2019年3月15日 23時) (
レス) id: 25241b6927 (このIDを非表示/違反報告)
uu(プロフ) - 古賀。さん» 古賀。さま、コメントありがとうございます！ そう言っていただけで嬉しいです…！ 今のところ、まだ続く予定ですので、お付き合い願えますと幸いです…！ (2019年3月15日 23時) (レス) id: 25241b6927 (このIDを非表示/違反報告)
uu(プロフ) - なのはなさいたさん» なのはなさいた さま、コメントありがとうございます！ そう言っていただけて本当に嬉しいです。わたしなりに頑張って更新して参りますので、お付き合い願えますと幸いです。 (2019年3月15日 23時) (レス) id: 25241b6927 (このIDを非表示/違反報告)
みさこ - 更新率が高くてめっちゃ嬉しいです。ぶっきらぼうだけど優しいすばるくんにキュンキュンしちゃってます。この先も主人公とすばるくんのやりとりが楽しみだなぁ〜 (2019年3月15日 16時) (レス) id: 3e577a13f9 (このIDを非表示/違反報告)
古賀。(プロフ) - いつも楽しみに読んでます！更新頻度が高くて嬉しいです笑すごく好きなので、シリーズを長く続くと嬉しいな…なんて笑これからも応援してます！頑張ってください！！ (2019年3月15日 16時) (レス) id: 3ebd91454d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：uu | 作成日時：2019年3月14日 23時
