マイナス100cmの恋【青】 (ページ50)

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「すみません、ちょっとお手洗い行ってきます」

隣の席の丸山さんに断りを入れて、個室を出る。

「酔っ払いに絡まれんようになあー」という丸山さんの声に小さく会釈をする。

がやがやと騒がしい店内を通り抜け、お手洗いに向かう。

用を足してお手洗いを出る。相変わらず騒がしい店内を歩き、個室へ戻ろうとすると、前から歩いてきたサラリーマン風の男の人3人組とぶつかった。

「……っあ、すみません」

小さく頭を下げて謝ると、男の人は「あぁ〜？」と裏返った声を出した。

顔真っ赤だし、ちょっとふらふらしてるし、相当飲んでるな…………。

絡まれても面倒だし、早く戻ろうとすると、横を通り過ぎようとすると、通路を塞がれた。

「おねぇちゃんひとり？いっしょに飲まない？」

…………………拝啓、数分前の丸山さん。すみません。酔っ払いに絡まれてしまいました。

「いえ、連れがいるので……すみません」

「女っ気なくて暑苦しかったからなあ〜、おねぇちゃんみたいに可愛い女の子がいてくれたら楽しくなるわあ」

酔っ払いは人の話を聞かない。

もうシカトして通ろうとすると、スカートの上からお尻を触られた。

「っちょっと」

ばっと手を振り払うと、おじさんたちは真っ赤な顔でにやにやと笑いながら手を掴んできた。

「やめてください」

「いいじゃん」

どうして酔っ払った人間はこうも面倒くさいのか。

どうこの場を切り抜けるか、きょろきょろと目線を左右に向けるけれど、周りは同じように酔っ払って騒いでいるひとばかりだった。

掴まれた手の力の強さに顔を顰めると、ぐっと肩を抱かれる感覚がした。

そのまま後ろに引っ張られて、誰かの胸に抱かれる。

わたしと同じ匂いが、鼻腔をくすぐる。

「………………なにしとん」

降ってきた不機嫌そうな声を見上げる。

じとりとおじさんたちを睨みながら、わたしの肩をぐっと抱いた安田さんがいた。

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