マイナス100cmの恋【青】 (ページ41)

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「なー、桜木さん」

「なんですか」

「そろそろおれのこと好きになってくれへんかなあ」

読んでいた雑誌から目だけをちらりと覗かせる。

「………………」

何も言えず黙っていると、安田さんは目じりを下げて苦笑いを作った。

「今日もあかんの？」

雑誌をテーブルに置いた安田さんが、カーペットと敷いたフローリングに座るわたしの前へきてしゃがみこんだ。

「ごめんなさい…………」

「そろそろ好きになってほしいなあ」

呟いた安田さんが、わたしの身体を抱き抱えるようにして、自分の膝の上へ座らせる。

途端に縮まりすぎた距離に、離れようと身体を動かすけれど、腰に回された腕の力が強く、結局今日も諦める。

あの、アルバムと封筒を見られた日から１ヶ月ほどが経っていた。

あれからも変わらず安田さんは、変わらずわたしの部屋へきて、いっしょにごはんを食べ、だらだらと過ごす。

ただひとつだけ、変わったことを挙げるとするなら。

「桜木さん、今日もすき」

会うたびに、毎回、安田さんがわたしに好きと言ってくるようになったこと。

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