マイナス100cmの恋【青】 (ページ36)

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さっそくもらった香水をつけて会社へ行くと、「なんか桜木さん、めっちゃいい匂いします！」と伊原くんが言ってきた。

ちなみに今朝は彼はカツサンドを3袋たいらげていた。朝からカツサンド。元気。

確かに、本当にいい香りで、ふわりと香るたびに口元が緩む。

あの日から、ほぼ毎日香水をつけ、家ではあのルームウェアを着ていた。

相変わらず安田さんは何度かうちにごはんを食べにきていて。

それに反するように、侯隆に会う時間は以前よりも格段に減っていた。

このまま会わなければこの心の中から奴を追い出せるんじゃないか、と喜んだけれど、やはり寂しい夜に思い浮かぶのは彼の白い肌とあの笑顔なわけで。

会いたいっていう気持ちは、会えない間に積もっていく。

侯隆に会いたい気持ちを考えないようにしつつ、今日も安田さんと時間を過ごす。

「あ、そういえば桜木さん、こないだ買ったっていう雑誌見せてもらってもいいー？」

キッチンで、取引先のひとにいただいたスイーツを食後のデザートに用意していたわたしは、「寝室の本棚にあるので持ってきてくださいー」と声をかける。

「えー、女の子の寝室なんか入ってもええのん？」

「どおぞー」

安田さんは、割とわたしのことを女の子扱いする。それが結構むずがゆくも恥ずかしくも嬉しかったりもする。

まあ、もうアラサーなのになにを喜んでんだって話なんだけど。

「安田さんありました？」

ケーキを盛り付けたお皿をテーブルに置き、寝室へ声をかける。

「あ、ねえ桜木さん」

寝室を覗くと、安田さんが一冊の本を持っていた。

「これ、アルバム？ヨコちょとかも写ってんの？見てもええ？」

黒色のアルバムに、頭がくらっとした。

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