マイナス100cmの恋【青】 (ページ4)

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「桜木さん、おはようございますー」

わたしの勤める会社に着くと、一足早く来ていたらしい後輩の伊原くんが挨拶をしてくれた。

「おはよう、伊原くん。後ろ、寝癖ついてるよ」

「えー本当ですかぁ……うわ、今日これで電車乗ってきちゃいましたよ！恥ずかし！」

後ろ髪に手をやり、あちゃーという顔をした伊原くんは、ころころっと子犬のように笑った。
まだあどけなさの残る顔が可愛く、笑みがもれる。
わたしより10も年下の彼は、まるで年の離れた弟のようで可愛い。

お手洗いに立ち水で濡らしたのか、さっきよりはましになった寝癖にはもう興味はないようで、伊原くんは鞄からコンビニのサンドイッチを取り出し、むしゃむしゃと食べていた。朝ごはんらしい。以前、朝ごはんくらい家でゆっくり食べたら？と言ったら、ギリギリまで寝てたいんすよ！と、いつにもなく真剣な顔で言われてしまった。彼は起きて10分で支度をして家を出るらしい。

次第にオフィスに人が集まり、今日も仕事を開始する。
明日までの案件や、新入社員のサポートに気を配っているうち、今朝のニュース番組の彼の姿はもう記憶の隅に追いやられていた。否、追いやった。

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