マイナス100cmの恋【青】 (ページ12)

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「あ……あの、わたし、ご厚意で言ってくれたのに、失礼なこと言ってしまったのに……怒らないんですか」

おずおずと切り出すと、みんなきょとんと同じように目を丸くした。

「なんで？怒らへんやろ、別に」相変わらず丼物を食べている大倉さん。

「しっかり自分の意見持って、ちゃんと信念に基づいて行動できるの、すごいと思うで」

信念、だなんて錦戸さんは言ったけれど、そんなに綺麗な言葉をかけてもらうのも悪い気がする……。

「な、俺の幼なじみはええ奴やろ。あほみたいに真面目で、あほみたいに頭かたくて、そんであほみたいに優しくてええ奴やねん」

わたしよりも一回り以上も大きい侯隆の手のひらが、わたしの頭を包み込むようにして、ぽんぽんと撫でる。それから、わしゃわしゃと髪を乱した。

「ほなまあ仕切り直ししよか！桜木さん、遠慮せんとなんでも頼んでええで」

「ヒナの奢りなん？よっしゃ胃はち切れるほど食ったんねん」

「お前には奢らんやんけ！ヨコ！」

「ｯかーーーお前はほんまに金の亡者に成り果てたのお、銭か、世の中銭かすべてですってかあ」

テレビで観たままの仲良さげな、いや、コントのような会話に自然と口元も緩む。

ここにはまだ、わたしの知らん侯隆がおったんか_____。

嬉しい一方で、心のどこかにチクチクとした寂しさを感じていた。

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