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ただでさえ弱かった語気が、ますます小さくなっていく。
やっぱり言わなければよかった。良かれと思って言ってくれたのに、場を白けさせるようなことを言ってしまった。
「…………まーお前ならたぶんそう言うやろなって思っとったわ! ごめんなあこいつこういうとこあほみたいに真面目やねん! 頭かったいねん」
侯隆は笑いながらぱしっとわたしの頭を軽く叩いた。
言ってしまったことに取り返しはつかないけれど、確実にみなさんの機嫌を損なってしまったと思い、顔を上げられずにいた。
すると、左隣から、素敵やね、と聞こえた。
驚いて顔を向けると、やはりあたたかくてやさしい笑顔の安田さんがいた。
「桜木さんは、自分の強い、素敵な人やね」
まるで綺麗な花畑でも見ているみたいな、にっこりとした穏やかな顔で言うものだから、こちらが面食らってしまった。
「桜木さんは、おれたちを応援してくれてるファンやけど、応援してるおれたちが目の前におるけど、ファンとしての自分と、ヨコちょの幼なじみっていう自分をちゃんと切り替えてる自分がしっかりしたひとなんやね」
ぱちぱちぱちぱち。瞬きが止まらない。
怒るのでなく、まさかそんな風に言ってくれるなんて。いや、買いかぶりすぎなのだろうけれど。
「せやなあ。僕やったら応援してるひととこうやって会う機会あったら絶対我忘れて握手してほしいしなんやったらどうにかこうにか上手いこと持っていかれへんかなって思うもんなあ」
これまたにっこりと笑って話す丸山さんに目を向ける。
「見た感じ俺らより年下やろ? しっかりしてんなあ」
八重歯を覗かせて爽やかに笑う村上さん。
……なんでみんな笑ってくれるの……?
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なのはなさいた(プロフ) - 更新ありがとうございます!続きが楽しみです!応援してます! (2019年3月27日 3時) (レス) id: 9a9c48371e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:uu | 作成日時:2019年3月7日 0時