真澄 ページ2
・
「A……好き……」
「もーお母さんでしょ？」
見た目だけでなく言動まで似てきたこの子は私のかわいい息子。
「Aに好きって言っていいのは俺だけ」
「もー真澄くんまでー」
「Aはぼくのだし」
「は？何言ってんの」
そっくりなくせになーんですぐに喧嘩になっちゃうかなー。
てかまず真澄くん、幼い我が子にそんな怖い顔向けないで。
「Aはどっちのものなの？」
「ぼくの」
「俺のでしょ？」
ふたりしてじりじりと近づいてくる。
ちょっとふたりとも目が本気過ぎ。
でも私だってだてに何年もふたりを相手にしてないんだ。
息子は何年も、と言うにはすこし足りない気もしないではないけど、でも大丈夫。
だってそっくりなんだもん。
「喧嘩ばっかりしてるふたりは知りません」
「えっ」
「えっ」
わかりやすく落ち込んだふたりを他所にさっさと家事を済ましていく。
主婦にはいくら時間があっても足りないのだ。
・
ちょうどひと段落といったときにやっと待ちわびていた声が聞こえた。
「お母さん」
「A」
「ぼくら仲良しだから知らないとか言わないで」
「ちゃんと仲良いから」
「ぼく、お父さんも好きだし」
「……生意気」
そんなこと言って、嬉しいくせに。
頬が緩んでるのバレバレなんだから。
「お母さんも、ふたりのことだーいすきだよ」
ふたりまとめてぎゅーってしたら、私の背中にも彼の腕がまわって引き寄せられた。
(お母さん大好き)
(……ちょっと)
(私も大好きだよー)
(ちょっと)
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作者名：がまずみ | 作成日時：2017年7月14日 22時
