【Fischer's】君に溺れる 【短編集】

あったかい feat.PEKETAN ページ11

『だから、あなたとは出かけません』
「え〜もしかして彼氏持ち？」
『…だったらなんですか』
「俺といる方が楽しいよ？」
『や、っめてください』

男は大きなピアスを揺らしながら、私の腕を強く掴んだ。
男の力に勝ることもできず、1歩2歩と待ち合わせ場所から遠ざかった。

突然、私の前に指す大きな背中。

「俺の彼女になにか御用ですか、」
『ぺ、ぺけたん！』

彼が男を睨みつけると、少し悪態をついて男は去っていった。

「A大丈夫？怪我はない？」
『大丈夫、ありがと』
「よかったぁ〜」

マフラーから覗く顔は安心しきった表情をしていた。彼は私の顔を両手で包みこんだ。

「冷たいね」
『…うん』
「ほら、これ使って」

ぽん、と手渡されたのは赤いマフラー。

『どうしたの、これ』
「Aにプレゼント」

感謝の言葉を告げる暇もなく、マフラーを巻かれて引かれる手。

「行こ」
『なんか、逞しくなったね』
「えーそうかなぁ」

体も心もあったかくなる、君の手

2/28お魚汰郎さんリクエスト

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