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泣けることを言ってくれるではないか。
「ありがとう。
北斗くんもかっこいいよー。
そのウェイターの制服、凄い決まってる」
「そう？」
「似合う似合う。
大人っぽいし、ぴしっとした格好が似合う。
イケメンだー」
「あ、じゃあさ、叔父さんと俺どっちが良い？」
「ーー北斗」
玄師が低い声で間に入った。
眉間に深く皺が刻まれている。
「仮にも店員を通そうってのなら、客にちょっかいかけるな」
「いいじゃん別に」
「よくない、わきまえな」
叔父にピシャリと言われて、甥の北斗は口をへの字に曲げた。
格好が大人そのものなだけに、酷くアンバランスな光景だ。
「じゃあもういいよ。
真衣ちゃんにサプライズできたし、帰る。
おかんに持ち帰るいいネタにもなったし」
「ーー待って北斗、何が望みだ。
小遣い？」
すかさずポケットから財布を取り出そうとする玄師。
「どうしよっかなー」
「昔のキミは、もうちょっと聞き分け良かった筈だ。
遊園地にも動物園にも連れて行ってあげたよね」
真衣はもうおかしくて、結局声を上げて笑ってしまった。
「真衣ーー」
「米津さん。
私、こんな誕生日初めて。
すっごい嬉しい。
ありがとうございます」
とてもとてもーー賑やかで楽しくて、そして幸せだと思ったのだ。
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きらきら光るお空の星よ。
とは言っても、東京の空は星の観察に向いていない。
逆に数少ない肉眼で見える星は、大抵有名どころだ。
「あっちのよく光るのが、おおいぬ座のシリウス。
で、そこからちょっと右上に上がって、綺麗に3つ並んでるのがオリオン座」
「詳しいね」
「これぐらいしか分かりませんよ。
北極星とか北斗七星とか、未だに見つけられないです。
天の川も見たことないし。
シリウスやオリオンがこれだけしっかり見えるってことは、もう冬の空ですね」
喋る真衣の息も白くなっていた。
冷えて空気の冴えた夜の道を、玄師と2人、手を繋いで帰る。
お互い手袋はしていなかったけれど、寒くなかった。
少なくとも、玄師の体温に守られている真衣の手は。
丁度空に見えていた星とか、目についた看板とか、そろそろ収穫したい野菜とか、色々なことを話しながら歩く。
歩道の街路樹から落ちた葉を踏みしめる度、ブーツの底でカサカサと音が鳴る。
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作者名：井原 x他1人 | 作成日時：2020年11月14日 23時
