【名探偵コナン】Hyper Ventilation【降谷零】

7.その姿にかつての夢を見る ページ8

何故かあの日以来、公安内だけだったら割と自由に行動が出来るようになった。
いや、1番混乱してるのは私だ。だっておかしいだろう。仮にも私は重犯罪者。公安もFBIも、それどころか世界中の機関が長年追って来た組織の一員なんだぞ。

私が逃げ出すとか考えないのか。私が何をやらかすか分からないのに、私の行動を制限しないなんて、バーボン、……いや、降谷零は何を考えてるんだ。

自由に行動出来ると言っても、制限時間はあるし、もちろん重要データが存在する場所や、捜査本部なんかは出歩けないが、それでもなんなんだこの厚遇は。
まあぼんやりするだけなのもアレだから、存分に出歩かせてもらっているけれど。
最初の頃は、私が普通に出歩いていることに目を丸くしていた捜査官達ばかりだったが、降谷零の指示であることを知ればそれは徐々に無くなった。

(何がしたいんだ、あの男)

ほぼ自由時間とかしたこの時間は別に嫌いではない。嫌いではないが、逆にこちらの方が大丈夫なのかと心配しなきゃいけないのは何だろう。

(……ジンや、他の幹部達はどうしてるかな)

今日も多分尋問されてるんだろうな。
底冷えするような恐ろしさを秘めていたから、きっと捜査官達の尋問にだって耐えるんだろう。
……長い付き合いの仲間だった。けれどもそれが長く続かないことは、あの日、善悪というものを自覚した日から、この組織もこの時間も、続かないのだと悟ったのだ。

……それでも長く一緒にいれば勿論情は湧くものだ。

それでもジンの手によって失ったものは私にも多くある。かつての仲間、その全て。

私が好きだと思えた人達の命を奪ったのも、少なくとも、あいつで。

「……難儀だな。」

「ホォー、何がだ？」

突然後ろからした声に驚いて構える。…が、その声の主はライだった。
迂闊だ。気配に気付けないほどに私は考え込んでいたらしい。

「……ライか」

「違うだろう。それは組織での名前だ。俺の名前はお前も知ってるはずだがな」

「……赤井秀一」

この男を見るといつも何故だか複雑な気持ちになる。
今はもういないヘルエンジェルの娘、シェリーの姉、そしてライだったこの人の、かつての恋人を、思い出すから。

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