120話 ページ42
飛行機に乗って、空港が小さくなるのを見ながら、何とも言えない気持ちになった。
泣き腫らした目は自分でも情けないとは思うけれど、感傷に浸るくらいは許してほしい。隣に秀一さんが座っていてもだ。
「………降谷くんには言いたいことは言えたか?」
どこまでお見通しなのか。
この人は先に飛行機に乗っていたはずで、先程の経緯云々は知らないはずだが。
「…向こうが逆に言いたいこと言うだけ言いましたよ。……本当に、馬鹿。未練だらけになるっての、お互いにわかってるくせに」
「それでも満更じゃなさそうだな」
「ええ。正直嬉しいんです。寂しいですけれど、嬉しい。」
「……そうか。」
良かったな。と秀一さんは頭を撫でてくる。
いつもは撫でてくるとしても乱暴で乱雑な手つきなのに、今回は優しかった。
想いが通じて、通じたからこそ目標も出来てしまった。
せっかく2年もFBIに行くのだ。そうだ、これはいい機会なんだろう。
「目標が出来たんです」
「ホォー?」
「………降谷の背中を任せてもらえるくらい強くなりたい。女としても、部下としても」
「…十分だと思うがな」
「ダメなんですよ。10年間友達にすらなれなかったんですから。
……友達すっ飛ばしてしまいましたけど、それでも、私は強くなりたい。今も昔もずっと、目標は貴方から変わってなんか無いんですよ、秀一さん」
そう言えば呆れたように、けれども秀一さんは笑うのだ。
そうか。と短く返されただけだが、暗にそれは「ならこれからも鍛えてやる」という事なのだろう。
降谷も降谷でその頃丁度、目標を立てていたとはもちろん知ることもなく。
小さくなった飛行場に名残惜しく思う。……私は知らないけれど、降谷も、見えなくなるまで見続けていた。
「正直なところ向こうでは日本人は非力に見られがちでな。特に女となるとだ。
とりあえずまず挨拶がてら最初に壁にヒビでも入れてビビらせてやれ」
「いやそれ出会いとしては一番最悪なやつですよ。というか暗に私のことゴリラって言ってませんか。出来ますけど」
「出来るのか…」
まるで昔に戻ったかのように、年甲斐もなく秀一さんと無邪気に話した。
とうとう地上の姿は見えなくなり、窓越しには一面の青空が広がる広大な光景。
日本の空よりずっとずっと広いアメリカという場所に、私はこれから向かうのだ。
2年後、それぞれの想いと願いを胸に秘めて、いつか一緒にまた向かい合える、その日まで。
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るか(プロフ) - 続編と番外編が気になりすぎてて夜も寝れないくらい気になってます!!パスワードを教えていただきたいのですが可能でしょうか、? (5月7日 4時) (レス) id: 50222dda5e (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - 続編と番外編が読みたいのですが、パスワードって教えていただけないのでしょうか? (2022年4月22日 15時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
あいる - 初めまして!!こんな神作初めて出会いました。ほんとにほんとに素敵です。お気に入り作者にしてしまいました。パスワードのヒントと作品にてオススメという形で載せたいのですがダメでしょうか?? (2020年11月14日 23時) (レス) id: 23cef4f251 (このIDを非表示/違反報告)
眠猫 - 番外編のパスワード載ってないので教えてくれないでしょうか?作者作品一覧に載ってるのは違う番外編のパスワードのようなので……… (2019年1月28日 18時) (レス) id: b6571f87b9 (このIDを非表示/違反報告)
神無月(プロフ) - 作者の作品一覧の所にパスワードというか、ヒントが載ってますよ (2018年4月22日 19時) (レス) id: 7b5ab892e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2017年12月16日 21時