115話 ページ37
あれからは事件の後処理や、別の案件での仕事を終わらせるために大忙しの日々だった。
正直、2ヶ月後の出国までに間に合うのだろうかとも思ったが、任務をほぼ終え、殆ど暇をしている秀一さんの手伝いもあって、予定より何とか早めに終われそうだった。
時は流れて出国まであと1ヶ月ほどといった時。
「疲れたな…」
「お疲れ、A。」
コーヒーを私の分まで買って来てくれたらしい降谷がコーヒーを寄越した。
礼を述べてコーヒー缶を開ける。私の好きなコーヒーを把握してくれているが、毎回あまり飲みすぎるなと釘を刺されている。
……和解してからと言うもの、降谷が優しい。
いや、割と最近は優しくはあったのだが、何と言うか素直になったと言うか、言動に棘が無くなったというか。
漸く友人という関係に至れたのだと思うと素直に嬉しいのだが、どうも自分の気持ちを自覚してる身としては、複雑な気持ちでもある。
あの時、言えなかったことはやっぱり多少は後悔した。
後悔はしたが、でも言ってしまったら余計日本を発ちたくない気持ちが増してしまうから、言わなくてよかったという気持ちもあるのだ。
「どうしたんだ、ぼんやりとして」
「いや、何でもないよ」
少し霞んでいた頭が、カフェインで少しずつ覚めていくのが分かる。
あと少し頑張れば、この件は落ち着いて、何とか出国までに間に合うだろう。
荷物まとめたりもしなきゃだから、実際あまり時間はないのだが。
「準備は進んでるのか?」
「まあまあね。時間ないから本当に少しずつだけど」
「……ヤバくなったら言え。少しは手伝う」
「…ありがとう」
ありがたいのだが素直に喜べないのが女というものは面倒臭い。
……もし想いを告げたとして、同じものを彼は返してくれるのだろうか。拒絶されはしないか、という恐怖心がある。
(キスは、されたけど)
自分で突然思い出して自爆した。
コーヒーが気管に詰まって噎せてしまう。驚いた降谷は大丈夫かと背中をさすってくるが、変なところに入ったのか、当面止まりそうにない。
「……今から心配だな。やっぱり」
「ゲホッ、…大げさだな」
「……そりゃあ。言っただろ、残って欲しいって」
上の命令だから仕方ないけど。
なんて甘えたような声で言われては、声に詰まってしまう。
(……本当にもう、)
友達の過程すっ飛ばして、君と恋をしたいだなんて、私はいつからこんなに強欲になってしまったのか。
××××
漸く人並の欲は持つようになったA
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ちゅん(プロフ) - 続編と番外編が読みたいのですが、パスワードって教えていただけないのでしょうか? (2022年4月22日 15時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
あいる - 初めまして!!こんな神作初めて出会いました。ほんとにほんとに素敵です。お気に入り作者にしてしまいました。パスワードのヒントと作品にてオススメという形で載せたいのですがダメでしょうか?? (2020年11月14日 23時) (レス) id: 23cef4f251 (このIDを非表示/違反報告)
眠猫 - 番外編のパスワード載ってないので教えてくれないでしょうか?作者作品一覧に載ってるのは違う番外編のパスワードのようなので……… (2019年1月28日 18時) (レス) id: b6571f87b9 (このIDを非表示/違反報告)
神無月(プロフ) - 作者の作品一覧の所にパスワードというか、ヒントが載ってますよ (2018年4月22日 19時) (レス) id: 7b5ab892e2 (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 番外編を読みたいのですが、パスワードがわかりません。どうすれば?…… (2018年4月21日 21時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2017年12月16日 21時